ミュルダールのアジアのドラマの評価
### 出版の背景
グンナー・ミュルダールは、スウェーデン出身の経済学者で、1974年にフリードリヒ・ハイエクと共にノーベル経済学賞を受賞しています。彼は開発経済学の分野で多大な貢献をし、特に後進国の経済発展に関する研究で知られています。
### アジアのドラマ：研究の目的と手法
1968年に出版された『アジアのドラマ』は、ミュルダールの代表作の一つであり、南アジア諸国の経済発展の問題に取り組んだ大規模な研究成果です。ミュルダールは本書において、インド、パキスタン、スリランカなどを中心とした南アジア諸国の経済発展の現状と課題を分析し、独自の開発戦略を提示しました。
特徴的なのは、伝統的な経済学の枠組みを超え、社会構造、政治体制、文化などの多様な要因を考慮した点です。彼は現地調査を重視し、膨大な統計データだけでなく、人々の行動様式や価値観など、定量化が難しい要素も分析に組み込みました。
### 主要な論点と主張
ミュルダールは、南アジア諸国が抱える貧困、人口増加、失業などの問題を、植民地支配の影響や伝統的な社会構造に起因すると分析しました。彼は、西洋の経済発展モデルをそのまま適用することの危険性を指摘し、それぞれの国の歴史や文化に根ざした開発戦略の必要性を訴えました。
### 評価と影響
『アジアのドラマ』は、出版当時、開発経済学の分野に大きな衝撃を与え、その後の開発論争に多大な影響を与えました。ミュルダールの多面的かつ実証的な分析方法は、多くの研究者に影響を与え、開発経済学における新たな視点を提供しました。
### 批判的な意見
一方で、『アジアのドラマ』は、その膨大な量と複雑さゆえに、批判的な意見も寄せられています。 特に、具体的な政策提言が乏しい点や、西洋中心的な視点が見られる点が指摘されています。