Skip to content Skip to footer

ミュルダールのアジアのドラマの思考の枠組み

ミュルダールのアジアのドラマの思考の枠組み

ミュルダールの「アジアのドラマ」における思考の枠組み

スウェーデンの経済学者であり、1974年にノーベル経済学賞を受賞したグンナー・ミュルダールは、1968年に出版した著書「アジアのドラマ:貧困からの挑戦」の中で、アジア諸国の経済発展の可能性と課題について包括的に分析しました。この大著の中で、ミュルダールは独自の思考の枠組みを用いて、伝統的な経済理論では捉えきれないアジア経済の複雑な現実を解き明かそうと試みました。

「制度要因」への着目

ミュルダールは、アジア諸国の経済発展を考える上で、伝統的な経済理論で重視される資本や労働といった「経済要因」だけでなく、「制度要因」が極めて重要であることを強調しました。彼は、土地制度、教育制度、政治体制、宗教、文化、価値観といった広範な要素が、経済活動に大きな影響を及ぼすと考えました。

例えば、インドにおけるカースト制度のような身分制度は、社会移動を阻害し、人材の有効活用を妨げる要因となりえます。また、汚職の横行や官僚主義といった政治体制の問題は、投資を阻害し、経済成長の足かせとなる可能性があります。

「ソフト・ステート」概念

ミュルダールは、「ソフト・ステート」という概念を用いて、多くの発展途上国に見られる国家の統治能力の弱さを指摘しました。ソフト・ステートとは、法の執行が緩く、腐敗が蔓延し、政府の政策実行能力が低い状態を指します。

彼は、ソフト・ステートが蔓延すると、経済発展に必要な制度改革が進まず、汚職や非効率性が横行し、経済成長が阻害されると考えました。

「循環的累積的因果関係」

ミュルダールは、経済発展と社会発展の関係を分析する上で、「循環的累積的因果関係」という概念を用いました。これは、ある要素の変化が他の要素に影響を与え、その影響がさらに最初の要素にフィードバックされることで、好循環または悪循環が生じるという考え方です。

例えば、貧困は低貯蓄、低投資、低生産性、低所得につながり、それがさらに貧困を固定化する悪循環を生み出す可能性があります。逆に、教育投資は人材育成、生産性向上、経済成長、所得増加につながり、それがさらに教育投資を促進する好循環を生み出す可能性があります。

ミュルダールは、アジア諸国が貧困の悪循環から抜け出し、経済発展を実現するためには、包括的な政策アプローチが必要であることを強調しました。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5