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ミュルダールのアジアのドラマの対極

ミュルダールのアジアのドラマの対極

1. 「アジアのドラマ」とその主張

グンナー・ミュルダールが1968年に発表した「アジアのドラマ:貧困の政治に関する調査」は、膨大な調査に基づき、当時の一般的な見方を覆し、アジア諸国の経済発展の遅れは植民地主義や西側諸国の責任ではなく、アジア諸国自身の内的要因に起因すると主張しました。 ミュルダールは、アジア諸国における伝統的な価値観や社会構造、非効率な農業、急速な人口増加、低い教育水準などが経済発展を阻害していると分析し、市場メカニズムに任せた自由主義的な経済政策ではなく、政府による積極的な介入と社会改革の必要性を訴えました。

2. ミュルダールの主張への批判と対抗軸

ミュルダールの主張は、その後の開発経済学に大きな影響を与えましたが、同時に様々な批判も呼びました。 主な批判としては、アジアの多様性を無視して画一的な見方をしていること、西洋中心主義的な価値観に基づいてアジアを評価していること、外部要因の影響を軽視していることなどが挙げられます。

3. 対極に位置する歴史的名著

「アジアのドラマ」の対極に位置する歴史的名著として、単一の作品を特定することは困難です。 これは、「アジアのドラマ」に対する批判が、単一の作品として結実するのではなく、複数の研究者による多様な視点からの反論という形で展開されたためです。 しかし、あえていくつかの代表的な作品を挙げるならば、以下のものが考えられます。

* **「近代アジアの政治経済学:ナショナリズムの台頭と植民地主義への反応」(J.A.A.ストックウェル編、1973年):** この著作は、アジアにおけるナショナリズムの興隆と植民地支配への抵抗運動に焦点を当て、西洋中心主義的な歴史観を相対化しようとしました。
* **「後発発展の経済学」(アミール・アミーン、1974年):** エジプト出身の経済学者であるアミーンは、開発途上国の経済発展を阻害しているのは、先進国との不平等な国際分業体制であり、西側諸国の経済的支配が続いていると主張しました。
* **「世界システム論:資本主義経済と16世紀以降のヨーロッパ世界経済」(イマニュエル・ウォーラーステイン、1974年):** ウォーラーステインは、世界を「中心」「周辺」「準周辺」の3つの地域に分け、中心が周辺を搾取することで資本主義経済が成り立っていると主張しました。 この理論は、アジア諸国の経済発展の遅れを、世界システムにおける構造的な問題として捉え直すきっかけとなりました。

これらの作品は、「アジアのドラマ」で提示された内的要因中心の見方に異議を唱え、植民地主義や国際経済における不平等な構造など、外部要因の重要性を改めて強調しました。

4. 現代における議論

「アジアのドラマ」とそれに対する批判は、現代の開発経済学においても重要な論点を提起し続けています。 グローバリゼーションが加速する中で、経済発展における内的要因と外部要因の相互作用をどのように理解するかは、依然として重要な課題です。

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