ミュルダールのアジアのドラマの位置づけ
経済発展論における位置づけ
グンナー・ミュルダールの『アジアのドラマ―南アジア経済の貧困問題』(原題: Asian Drama: An Inquiry into the Poverty of Nations) は、1968年に出版された、南アジア (インド、パキスタン、スリランカなどを含む) の経済発展に関する研究書です。
本著は、伝統的な経済学の枠組みを超え、社会構造、政治体制、文化、宗教など、多岐にわたる要因を考慮に入れた、包括的な分析を試みた点で画期的と評されました。ミュルダールは、西洋の近代化理論に基づく発展戦略の限界を指摘し、アジア諸国独自の文脈に合わせた開発アプローチの必要性を訴えました。
開発経済学における位置づけ
『アジアのドラマ』は、開発経済学の分野においても大きな影響を与えました。ミュルダールは、貧困、不平等、人口増加といった問題の根深さを明らかにし、開発途上国が直面する課題の複雑さを浮き彫りにしました。
また、彼は「ソフト・ステート」という概念を提唱し、汚職や縁故主義が蔓延する国家のあり方が、経済発展を阻害する要因となっていると指摘しました。
批判
ミュルダールの主張は、その後の開発経済学の議論に大きな影響を与えましたが、一方で批判も少なくありません。市場メカニズムを軽視しすぎているという批判、社会主義的な計画経済に傾倒しすぎているという批判、アジア諸国の多様性を十分に捉えきれていないという批判などがあります。
影響
『アジアのドラマ』は、出版から半世紀以上が経過した現在においても、開発経済学の古典として読み継がれています。彼の提起した問題意識や分析視点は、現代社会においてもなお、重要な示唆を与え続けています。
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