## マンハイムのイデオロギーとユートピアに影響を与えた本
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カール・マルクスの「ドイツ・イデオロギー」
カール・マンハイムの思想、特に主著『イデオロギーとユートピア』に多大な影響を与えた一冊として、カール・マルクスの未完の著作『ドイツ・イデオロギー』が挙げられます。
マンハイムは、マルクスの唯物史観やイデオロギー論を批判的に継承しながら、独自の知識社会学を構築しました。『ドイツ・イデオロギー』においてマルクスは、支配階級の思想が、あたかも普遍的なものとして社会全体に浸透していく過程を「イデオロギー」と呼び、批判しました。
マンハイムは、マルクスのこの洞察をさらに発展させます。彼は、イデオロギーは特定の階級のみならず、あらゆる人間の思考様式に内在すると考えました。人間は、それぞれの立場や経験に基づいて世界を解釈し、行動します。そして、その解釈の枠組みとなるのがイデオロギーであるとマンハイムは主張しました。
『ドイツ・イデオロギー』で展開された、思想と社会構造との関係についての考察は、マンハイムの思想の根幹を成しています。マルクスの思想を批判的に検討することで、マンハイムは、より普遍的なイデオロギー概念を提示し、知識社会学という新たな地平を切り開いたと言えるでしょう。