## マンサーの法の一般理論の普遍性
マンサーの法の一般理論における普遍性の主張
ハンス・ケルゼンと並んで現代法実証主義の双璧とされるアルフレッド・ルドルフ・マンサー(Alf Ross, 1899-1979)は、その主著『法の一般理論』(Om Ret og Retfaerdighed, 1953)において、「法」という概念を現実の法的言説に現れる用法に合致する形で定義することを目指しました。マンサーは、法規範それ自体には規範性を認めない立場から、法規範を事実命題へと還元しようと試みました。彼は、裁判官が特定の状況下で特定の行動をとるであろうという予測を表明する形で、法規範を解釈しました。
普遍性と法的妥当性の問題
マンサーは、法的妥当性の根拠を、人々の法的意識における共通認識に見出そうとする立場、すなわち「共通認識説」を批判しました。彼は、共通認識が実際に存在するかどうかは疑わしく、仮に存在したとしても、それが法の妥当性の根拠となるためには、その共通認識自体が正当化されなければならないという循環に陥ると主張しました。
事実命題への還元と予測理論
マンサーは、法規範を、裁判官が特定の状況下で特定の行動をとるであろうという予測を表明する事実命題へと還元できると主張しました。彼の理論は、「予測理論」として知られています。マンサーによれば、法規範は、裁判官の行動という経験的に検証可能な事実に基づいているため、客観的な妥当性を持つと主張しました。
マンサー理論への批判
マンサーの法理論は、その明晰さと客観性を重視する姿勢から、法実証主義の代表的な理論として評価されています。しかしながら、彼の理論は、法の規範性や義務性の問題を十分に説明できないという批判も受けてきました。