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マンの魔の山の構成

マンの魔の山の構成

構成の特徴

トーマス・マンの『魔の山』は、伝統的な教養小説の形式を踏襲しつつ、独自の複雑な構成を持つ作品として知られています。 大きく分けて以下の3部構成を基本としています。

第1部

* 主人公ハンス・カストルプが、サナトリウムの療養患者である従兄弟ヨーアヒムを見舞うため、7月初旬に保養地ダヴォスを訪れるところから物語が始まります。
* 当初3週間の滞在予定であったカストルプは、サナトリウムの奇妙な雰囲気と、そこで出会う様々な人物たちに魅了され、彼自身も肺病と診断されたことをきっかけに、山での生活に身を投じることを決意します。
* 第1部では、サナトリウムという「異界」に足を踏み入れたカストルプが、その独特の秩序や価値観に徐々に適応していく様子が描かれます。
* また、この部は、後の展開を暗示するような象徴やモチーフが多数登場することも特徴です。

第2部

* 第2部は、サナトリウムでの生活に完全に順応し、精神的な変容を遂げていくカストルプの姿が中心的に描かれます。
* 彼は、様々な思想や文化に触れる中で、それまでのブルジョワ的価値観を相対化し、人間存在の本質について深く考察するようになります。
* この過程で、カストルプは、セテムブリーニ、ナフタ、ペペルコーンといった、彼に大きな影響を与えることになる人物たちと出会います。
* 彼らの対立する思想との葛藤を通して、カストルプは、生と死、理性と感性、精神と肉体といった、根源的な二項対立に直面していきます。

第3部

* 第3部は、第一次世界大戦の勃発により、サナトリウムという「魔の山」から現実の世界へと引き戻されるカストルプの姿が描かれます。
* 彼は、長い山での生活で培った思想や価値観と、戦争という現実との間で深く葛藤します。
* 終盤、カストルプは、戦場で消息不明となり、その後の運命は読者の想像に委ねられます。
* 作品全体を通して展開されてきた、人間存在や時間、歴史、愛といった深遠なテーマに対する解答は、最後まで明確には示されません。

時間構成

* 『魔の山』の時間構成は、客観的な時間と、主人公カストルプの主観的な時間が複雑に交錯している点が特徴です。
* 物語の開始から7年後、第一次世界大戦勃発までの約7年間が、作品全体の大部分を占めています。
* しかし、カストルプの意識の中では、時間感覚が大きく揺れ動く様子が描かれ、現実の時間経過と乖離した描写も多用されています。

モチーフと象徴

* 作品全体を通して、様々なモチーフや象徴が繰り返し登場し、多層的な意味を織りなしていることも特徴です。
* 例えば、「雪」、「山」、「サナトリウム」といったモチーフは、それぞれ、死、超越、異界といった象徴的な意味合いを持っています。
* また、「時間」も重要なモチーフであり、時計やカレンダーといった具体的なアイテムを通して、時間の相対性や人間の有限性といったテーマが浮かび上がります。

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