## マルサスの人口論を読む前に
1. マルクスが影響を受けた書物であることを意識する
トーマス・ロバート・マルサスの『人口論』は、1798年に初版が発表された経済学および人口学の古典として知られています。マルサスは、本書の中で人口増加が幾何級数的に進行する一方で、食料生産は算術級数的にしか増加しないという理論を展開しました。そして、この不均衡が必然的に貧困や飢饉、病気などの社会問題を引き起こすと主張しました。
マルサスの『人口論』は、その後の社会思想に大きな影響を与えました。特に、カール・マルクスはマルサスを厳しく批判しながらも、彼の人口論を土台として独自の経済理論を構築しました。マルクスの思想を理解する上でも、マルサスの『人口論』は重要なテキストと言えるでしょう。
2. 当時の社会背景や歴史的文脈を理解する
『人口論』は18世紀末のイギリスで書かれました。この時期は、産業革命の初期にあたり、イギリス社会は大きな変化の渦中にありました。都市への人口集中、貧困の拡大、環境問題の深刻化など、マルサスが目の当たりにした社会問題を理解することは、『人口論』を深く読み解く上で欠かせません。
また、『人口論』はフランス革命の余波を受けて書かれたという点も見逃せません。マルサスは、フランス革命の理念である平等主義や楽観的な進歩史観に対して、人口問題という現実的な課題を突きつけたのです。当時の政治思想や社会状況を踏まえる資料も合わせて参照することで、『人口論』の主張はより立体的に浮かび上がってくるでしょう。
3. マルサス自身の立場や論点を整理する
『人口論』は、難解な文章で書かれていることでも知られています。そのため、読み始める前に、マルサス自身の主張や論点を整理しておくことが重要です。まず、マルサスが人口問題をどのように定義づけ、どのような論理で自説を展開しているのかを把握しましょう。
そして、マルサスが提示した解決策についても注意深く読み解く必要があります。マルサスは、人口増加を抑制するために、道徳的な自制を訴りました。また、貧困層への救済は人口増加を助長するだけで逆効果であると主張し、当時の社会福祉政策を批判しました。
4. 批判的な視点を持つ
マルサスの『人口論』は、発表当時から多くの批判を受けてきました。特に、人口増加が必ずしも経済成長の阻害要因にならないことや、技術革新によって食料生産は飛躍的に増大する可能性があることなどが指摘されています。
現代の視点から見ると、『人口論』には偏見や誤りも含まれていると言わざるを得ません。しかし、だからといって、『人口論』を単なる過去の遺物として切り捨てるべきではありません。重要なのは、『人口論』の主張を批判的に検討し、現代社会における人口問題や環境問題を考える上での教訓を引き出すことです。