## マルサスの人口論の話法
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論理と修辞法
マルサスは『人口論』において、幾何級数的増加と算術級数的増加という対比を用いることで、人口と生活資源の間に生じる必然的な不均衡を論理的に説明しようと試みています。
まず、マルサスは「食料がなければ人は生きていけない」という、誰もが認めざるを得ない単純な事実を提示します。そして、人口は抑制されなければ幾何級数的に増加する可能性がある一方で、食料生産は算術級数的にしか増加しないという経験則に基づいた前提を提示します。
次に、マルサスは幾何級数的な増加と算術級数的な増加の速度の差を具体的な数字を用いて示すことで、人口増加が食料生産を常に上回る可能性の高さを強調します。
このように、マルサスは単純な前提と論理的な推論を積み重ねていくことで、人口と食料資源の不均衡という結論を導き出そうとしています。
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統計データと歴史的事実の利用
マルサスは自らの主張を補強するために、当時の統計データや歴史的事実を積極的に引用しています。
例えば、マルサスはアメリカ植民地の人口増加率やイギリスの穀物価格の推移といった統計データを提示することで、人口増加が食料価格に影響を与えることを示唆しています。
また、マルサスは過去の文明が飢饉や疫病によって崩壊した事例を挙げることで、人口増加が抑制されなかった場合の悲惨な結末を暗示しています。
このように、マルサスは統計データや歴史的事実を効果的に用いることで、自らの主張に説得力を持たせようと試みています。
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反論への対処
マルサスは自らの主張に対する反論を想定し、それらに先回りして反論することで、自説の正当性を主張しています。
例えば、人口増加は技術革新を促進し、食料生産の増加につながるという反論に対して、マルサスは技術革新の効果は一時的なものに過ぎず、人口増加を根本的に抑制することはできないと反論しています。
また、貧困や飢餓は人口増加ではなく、社会制度の不備によって引き起こされるという反論に対して、マルサスはたとえ社会制度が完璧であっても、人口増加が続けば資源の限界に達し、貧困や飢餓は避けられないと反論しています。
このように、マルサスは潜在的な反論をあらかじめ想定し、それらに論理的に反論することで、自説の客観性と妥当性をアピールしようと試みています。