マルクス／エンゲルスの共産党宣言が扱う社会問題
ブルジョアジーの台頭と資本主義の矛盾
マルクスとエンゲルスは、共産党宣言の中で、当時の社会が資本主義の台頭によって大きく変容しつつあることを鋭く指摘しています。産業革命によって生産力が飛躍的に向上し、それに伴い、新しい支配階級であるブルジョアジーが台頭しました。彼らは工場や機械を所有し、労働者を雇用することで莫大な利益を上げていました。
一方、労働者階級は、ブルジョアジーの所有する生産手段で働く以外に生活の糧を得る術がなく、低賃金と劣悪な労働環境に苦しめられていました。マルクスとエンゲルスは、このような資本主義社会における資本家階級と労働者階級の対立こそが、当時の社会問題の根源であると捉えました。
労働の疎外と人間性の喪失
資本主義社会において、労働者は自分が作った製品に対する所有権を持たず、単なる労働力として扱われます。労働者は、長時間労働を強いられ、自分の才能や創造性を活かす機会を奪われています。マルクスは、このような状況を「労働の疎外」と呼び、人間本来の姿からかけ離れたものだと批判しました。
労働の疎外は、人間性の喪失にも繋がります。労働者は、ただ生きるためだけに働き、自分の時間や自由を奪われています。彼らは、社会の一員としての繋がりや連帯感を失い、孤独と孤立を深めていくことになります。
階級闘争の激化と社会の不安定化
マルクスとエンゲルスは、資本主義社会における資本家階級と労働者階級の対立は、時間の経過とともに激化していくと予測しました。資本主義の競争原理は、一部の資本家による富の独占と、大多数の労働者の貧困化を招きます。
そして、貧富の格差が広がり、社会不安が高まると、労働者階級は自分たちの権利と自由を求めて立ち上がると考えました。マルクスとエンゲルスは、この労働者階級による革命こそが、資本主義社会の矛盾を克服し、新しい社会を生み出す原動力になると主張しました。