## マルクス／エンゲルスのドイツ・イデオロギーの力
### 唯物史観の提唱
「ドイツ・イデオロギー」の最も大きな力は、マルクスとエンゲルスが後に「唯物史観」と呼ぶことになる新しい歴史観を提示した点にあります。彼らは、従来の歴史観が観念論に基づき、歴史を思想や理念の進歩として捉えてきたことを批判し、現実の物質的な生活過程から歴史を説明することを主張しました。
### 人間存在の物質的な基盤への着目
マルクスとエンゲルスは、人間の意識や観念は、物質的な生産活動や経済的な関係によって規定されると考えました。人間はまず、生きていくために食べ、住まい、衣服などを生産しなければならず、そのための労働が人間の意識や社会構造を形作っていくと論じました。
### イデオロギー批判
「ドイツ・イデオロギー」では、支配階級の思想が、あたかも普遍的な真理であるかのように提示される「イデオロギー」のメカニズムが鋭く批判されています。マルクスとエンゲルスは、当時のドイツ思想界を席巻していたヘーゲル哲学やフォイエルバッハの唯物論を分析し、それらが支配階級の利益を擁護するイデオロギーとして機能していると指摘しました。
### 階級闘争の分析
「ドイツ・イデオロギー」では、歴史は階級闘争の歴史であると主張されています。マルクスとエンゲルスは、生産手段の所有関係に基づいて社会が異なる階級に分裂し、それぞれの階級が自らの利益のために闘争すると分析しました。そして、資本主義社会における労働者階級と資本家階級の対立を分析し、資本主義社会における搾取の構造を明らかにしました。
### 共産主義社会への展望
「ドイツ・イデオロギー」では、階級対立のない共産主義社会の実現という展望が提示されています。マルクスとエンゲルスは、資本主義社会における生産力の発展が、やがて資本主義そのものを崩壊させ、新しい共産主義社会を生み出すと予測しました。共産主義社会では、生産手段が社会全体のものとなり、階級対立や搾取のない平等な社会が実現するとされました。