## マルクス/エンゲルスのドイツ・イデオロギーの話法
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皮肉と風刺を用いた論駁
「ドイツ・イデオロギー」は、マルクスとエンゲルスが若年期に著した、ヘーゲル左派批判を中心とした著作です。この著作で特徴的なのは、彼らが青年特有の情熱を込めて、徹底的に既存の思想を批判している点です。
マルクスとエンゲルスは、単に論理的な反論を展開するのではなく、皮肉と風刺をふんだんに用いることで、読者を挑発し、既存の思想の矛盾や滑稽さを露わにしようと試みています。例えば、ヘーゲル左派の代表的な思想家であるブルーノ・バウアーに対しては、「聖ブルーノ」と皮肉たっぷりに呼び、その観念論的な歴史観を痛烈に批判しています。
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平易な言葉と具体的なイメージ
「ドイツ・イデオロギー」では、難解な哲学用語を避けて、可能な限り平易な言葉で議論が進められています。これは、マルクスとエンゲルスが、従来の哲学が専門家だけの閉鎖的な世界に閉じこもっていることを批判し、自分たちの思想を広く一般の人々に理解してもらいたいと考えたためです。
また、抽象的な概念論ではなく、具体的な歴史的事実や社会現象を例に挙げながら議論を進めている点も特徴的です。例えば、唯物史観を説明する際には、生産様式や階級闘争といった概念を用いるだけでなく、具体的な歴史上の出来事や社会の現実を例示することで、読者の理解を助けています。
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対話形式による議論の展開
「ドイツ・イデオロギー」では、一部において対話形式が用いられています。これは、単に一方的に持論を展開するのではなく、読者を議論に巻き込み、能動的に考えさせることを意図したためと考えられます。
対話形式を用いることで、異なる立場や意見を対比させながら、議論を深めていくことが可能になります。また、読者はあたかもその議論に参加しているかのような臨場感を持って、テキストを読むことができます。