マルクス・アウレリウスの語録に影響を与えた本
エピクテトスの語録
マルクス・アウレリウスの『自省録』は、ストア派の教え、特にエピクテトスの思想の影響を強く受けていることは明らかです。エピクテトスは、1世紀後半から2世紀初頭にかけて活躍したギリシャのストア派哲学者でした。彼は奴隷として生まれましたが、後に解放され、ローマで哲学を教えました。彼自身の著作は残っていませんが、彼の教えは、弟子であるアリアノスによって『語録』と『エンケリディオン』にまとめられ、現代に伝わっています。
『自省録』と『語録』には、ストア哲学の中心的な教義である、理性、徳、自然に従うことの重要性など、共通するテーマが多く見られます。例えば、どちらの著作も、私たちがコントロールできるものとできないものを区別することの重要性を強調しています。エピクテトスは、「欲求や嫌悪ではなく、私たちの意見こそが私たちを苦しめるのだ」と述べています。同様に、マルクス・アウレリウスも、「あなたを苦しめるのは、物事そのものではなく、あなた自身のそれに対する意見なのだ。意見を変えることはできるのだから」と書いています。
さらに、両方の著作は、徳こそが唯一の善であり、悪徳こそが唯一の悪であるというストア派の考え方を反映しています。エピクテトスは、「富や名声ではなく、正義、勇気、知恵などの徳こそが、真の幸福と心の平安につながる」と教えています。マルクス・アウレリウスもまた、徳を重視し、「人生の目的は、理性に従って生き、正義、善意、自己制御を実践することである」と述べています。
エピクテトスの影響は、『自省録』全体に見られる、逆境に対する心の持ち方にも表れています。エピクテトスは、私たちは困難な状況を克服するために、理性と徳を使うべきだと教えています。彼は、「私たちは、困難な状況を避けるのではなく、それを克服するために努力すべきである」と述べています。マルクス・アウレリウスも同様に、「逆境に直面したときにこそ、私たちの魂の強さが試される」と書いています。
マルクス・アウレリウスは、『自省録』の中でエピクテトスの名前を直接挙げていませんが、エピクテトスの思想が彼の哲学に大きな影響を与えていることは明らかです。理性、徳、自然に従うことの重要性、コントロールできるものとできないものを区別すること、逆境に対する心の持ち方など、共通するテーマは、エピクテトスの教えがマルクス・アウレリウスの思想の形成に重要な役割を果たしたことを示唆しています。