マルクス・アウレリウスの自省録の原点
目的
「自省録」は、マルクス・アウレリウスが自分自身のために書き留めた個人的な覚書であり、出版を意図したものではありませんでした。
そのため、哲学的な論文として書かれたものではなく、体系的な思想や教義を展開するものでもありません。
彼が書き記したのは、日々の生活の中で直面する困難や課題に向き合う中で得られた、彼自身の内省、洞察、そして教訓でした。
執筆時期と場所
「自省録」は、マルクス・アウレリウスがローマ皇帝として在位した161年から180年の間の、軍隊の遠征中に書かれたと考えられています。
具体的な場所や時期については断定できませんが、本文中の記述から、ゲルマン人との戦争やパンノニア地方への遠征中に書かれた部分が多いと推測されています。
思想的背景
「自省録」には、ストア派哲学の影響が色濃く表れています。
ストア派は、理性に従って生きることを重視し、感情や欲望に支配されない不動心を理想としました。
マルクス・アウレリウスは、ストア派の教えを深く学び、実践しようと努めました。
「自省録」には、ストア派の重要な概念である、「自然に従って生きる」「徳に従って生きる」「運命を受け入れる」といった思想が繰り返し登場します。
ギリシャ語で書かれた理由
「自省録」は、当時のローマ帝国の公用語であったラテン語ではなく、ギリシャ語で書かれています。
これは、マルクス・アウレリウスがギリシャ文化に深い敬意を払っていたこと、
そしてストア派哲学がギリシャに起源を持つ思想であったことと関係があるとされています。
彼は、ギリシャ語で思索することで、より深く自分自身と向き合えると考えていたのかもしれません。