マルクスの資本論の原点
マルクスの知的背景と当時の社会状況
カール・マルクスの主著『資本論』は、19世紀の古典経済学、特にアダム・スミスとデイヴィッド・リカードの著作を批判的に継承しながら、独自の経済理論を展開しています。マルクスは、ヘーゲル弁証法の影響を受けつつも、それを唯物論的に解釈し直し、歴史を物質的な生産様式の発展として捉える「史的唯物論」を構築しました。
当時のヨーロッパは産業革命の真っただ中にあり、資本主義経済が急速に発展していました。工場制機械生産の普及に伴い、都市部への人口集中や労働者階級の形成が進み、貧富の格差が深刻化していきました。マルクスは、こうした社会状況を目の当たりにし、資本主義経済の矛盾と労働者階級の窮状を鋭く批判しました。
資本論の執筆の経緯と目的
マルクスは、1840年代から経済学の研究を始め、1848年にはフリードリヒ・エンゲルスと共に『共産党宣言』を執筆しました。その後、ロンドンに亡命したマルクスは、大英博物館に通いながら経済学の研究に没頭し、『資本論』の執筆に取り組みました。
『資本論』の目的は、資本主義経済の運動法則を明らかにし、その歴史的な発生、発展、そして最終的な崩壊を科学的に解明することにありました。マルクスは、資本主義経済が本質的に不安定なシステムであり、その内部矛盾によって必然的に崩壊すると考えていました。
マルクスは、『資本論』を複数巻構成で構想していましたが、生前に出版されたのは第1巻のみでした。第2巻と第3巻は、エンゲルスによって編集され、マルクスの死後に出版されました。