## マルクスの資本論の仕組み
1. 商品の二つの価値と労働価値説
マルクスの資本論は、まず「商品」の分析から始まります。マルクスは、商品には「使用価値」と「交換価値」という二つの価値があると指摘します。使用価値とは、その商品が持つ具体的な有用性のことを指します。一方、交換価値とは、他の商品と交換される際の価値の比率のことを指します。
例えば、ある量のパンと、ある量の布が交換されるとします。この時、パンと布は異なる使用価値を持ちますが、交換という行為においては、両者は一定の比率で交換されます。マルクスは、この交換比率の根底には、共通の尺度となるものがあると主張しました。それが「労働価値説」です。
労働価値説とは、商品の交換価値は、その商品を生産するために社会的に必要な労働時間によって決定されるという考え方です。つまり、パンと布の交換比率は、それぞれの生産に必要な社会的な労働時間の比率によって決まるとされます。
2. 剰余価値論と資本主義の矛盾
マルクスは、労働価値説を基に、資本主義社会における「剰余価値」の搾取の構造を明らかにしようとしました。資本家は、労働者を雇用し、賃金を支払うことで労働力を買い取ります。労働者は、労働力を提供することで賃金を得て生活します。
しかし、労働者が生産する価値は、賃金の価値を上回るとマルクスは考えました。例えば、1日の労働で、労働者は賃金に相当する価値を4時間で生産し、残りの4時間は資本家のために無償で労働するとします。この賃金を超えた労働時間の価値が「剰余価値」です。
マルクスは、この剰余価値こそが、資本家の利益の源泉であり、資本主義社会における搾取の根源だと主張しました。資本家は、労働者から剰余価値を搾取することで、自己の資本を拡大していくとされます。
さらに、マルクスは、資本主義経済は、この剰余価値の追求によって、必然的に矛盾と危機に陥ると考えました。その一つが「過剰生産」の問題です。資本家は、利潤を追求するために、絶えず生産を拡大しようとします。しかし、労働者への賃金は抑制されるため、生産された商品は十分に消費されず、過剰生産に陥るとされます。
また、資本主義経済では、技術革新が促進され、労働の生産性が向上します。しかし、これは同時に、必要な労働者数を減少させ、失業を生み出すことにも繋がります。失業者の増加は、消費の低迷を招き、さらなる過剰生産を招く要因となるとマルクスは考えました。
3. 資本主義の将来と共産主義社会
マルクスは、資本主義社会における矛盾と危機は、資本主義社会の内部から生じるものであり、避けられないものだと考えました。そして、最終的に、労働者階級が資本家階級に対して革命を起こし、資本主義社会は崩壊すると予測しました。
革命後の社会として、マルクスは「共産主義社会」を構想しました。共産主義社会では、生産手段は私的所有ではなく、社会全体で共有されます。そして、労働者は、自己の能力に応じて労働し、その労働の成果に応じて分配を受けるとされます。
マルクスは、共産主義社会では、搾取や階級対立のない、真に自由で平等な社会が実現すると信じていました。
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