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マルクスの資本論に影響を与えた本

マルクスの資本論に影響を与えた本

アダム・スミスの『国富論』

カール・マルクスの『資本論』は、19世紀の古典派経済学、特にアダム・スミスの『国富論』への批判的応答として位置付けることができます。『国富論』は、市場経済のメカニズムを「見えざる手」という概念を用いて説明し、自由競争や分業の利点を説いた画期的な著作でした。マルクスはスミスの分析の洞察力、特に労働価値説や分業の分析を高く評価していました。しかし同時に、スミスが資本主義の矛盾や搾取の構造を見過ごしていると批判しました。

マルクスはスミスの労働価値説を継承し、発展させました。スミスは商品の価値は、それを生産するために必要な労働量によって決まると論じました。マルクスはこの考え方をさらに推し進め、労働力と労働の区別を導入しました。労働力は労働者が仕事をする能力であり、資本家は労働力を購入して労働をさせ、その結果として生み出された価値の一部を利潤として搾取するとマルクスは主張しました。

また、マルクスはスミスの分業論についても批判的な検討を加えました。スミスは分業が生産性向上に不可欠であると論じましたが、マルクスは分業が労働者の専門性を奪い、労働を単調で疎外されたものにする側面があると指摘しました。さらに、分業によって労働者は生産過程全体から切り離され、自分が作った製品への愛着や責任感を失ってしまうとマルクスは考えました。

このように、『資本論』はスミスの『国富論』を土台としながらも、その限界を乗り越えようとする試みでした。マルクスはスミスの分析を批判的に継承し、独自の資本主義批判を展開したのです。

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