## マッハの感覚の分析に匹敵する本
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ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」
エルンスト・マッハの『感覚の分析』は、経験主義の立場から、感覚こそが知識の源泉であると主張し、物理学や心理学に大きな影響を与えました。
同じように、言語と論理の関係に新たな視点を提供し、哲学のみならず、数学、論理学、認知科学、そして人工知能の分野にまで影響を与えたのが、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの主著『論理哲学論考』です。
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両書の共通点:従来の思考の枠組みを揺さぶる革新性
『感覚の分析』は、それまでの哲学や科学が前提としていた客観的な世界像を疑い、人間の主観的な感覚経験を出発点とすることで、新たな認識論を提示しました。
同様に、『論理哲学論考』は、それまで自明と考えられていた言語と世界の関係を問い直し、言語は世界の「像」として機能するという「絵画論」を展開しました。しかし、ウィトゲンシュタイン自身、後にこの見解を批判し、言語は人間の多様な活動の中で「道具」として機能するという「言語ゲーム」の概念を提唱することになります。
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難解さと多様な解釈を生む深遠な内容
『感覚の分析』は、物理主義的な世界観を打ち出しながらも、意識や自我の問題を深く考察しており、その解釈をめぐって様々な議論が巻き起こりました。
『論理哲学論考』もまた、難解な表現で知られており、出版以来、哲学者たちによって多様な解釈がなされてきました。特に、「語りえぬものについては沈黙しなければならない」という有名な命題は、論理実証主義者たちによって、形而上学批判として解釈され、大きな影響を与えました。
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多様な分野への影響
『感覚の分析』は、その後の論理実証主義や現象学など、20世紀の哲学に大きな影響を与えただけでなく、心理学や物理学などの科学分野にも影響を与え、アインシュタインの相対性理論にも影響を与えたと言われています。
『論理哲学論考』もまた、分析哲学の中心的なテキストとして、クワイン、ローティ、デイヴィッドソンといった現代哲学を代表する哲学者たちに多大な影響を与えました。
このように、『感覚の分析』と『論理哲学論考』は、共に従来の思考の枠組みを揺さぶり、多様な分野に影響を与えたという点で、共通点を持つと言えるでしょう。