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マキューアンの「ナッツシェル」とアートとの関係

## マキューアンの「ナッツシェル」とアートとの関係

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音楽

作中では、主人公である胎児期のピンが、母親トリュディが朗読するハムレットを聞かされる場面が何度も登場します。これは直接的にシェイクスピアの作品と結びついていますが、ピンはこれを演劇としてではなく、音の響き、リズム、声色など、音楽的な要素として捉えている描写が特徴的です。

また、トリュディの愛人であり、ピンの叔父であるクロードが詩を朗読する場面も登場します。この時、ピンはクロードの声を「濁ったバリトン」と表現し、音楽用語を用いて描写しています。

これらの描写を通して、ピンが世界を音を通して認識し、芸術の中でも特に音楽に敏感であることが分かります。

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「ナッツシェル」は、そのタイトルが示すように、シェイクスピアの「ハムレット」の台詞「I could be bounded in a nutshell and count myself a king of infinite space…」を踏まえています。これは作品全体に「ハムレット」のモチーフが散りばめられていることを示すだけでなく、「ナッツの殻」という極小の空間に閉じ込められたピンの視点と、「無限の空間」に対する憧憬を対比的に描き出す効果も持っています。

また、クロードが朗読する詩は、その内容が作中の状況とリンクしており、象徴的な意味合いを持っています。詩は単なる芸術作品として描かれるのではなく、登場人物たちの心情や関係性を浮き彫りにする役割も担っています。

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絵画

作中には、具体的な絵画作品は登場しませんが、ピンがトリュディの部屋の様子を詳細に観察し、色彩や構図を意識した描写が見られます。これはピンが視覚的な情報にも敏感であり、世界を絵画的に捉えていることを示唆しています。

また、「ナッツシェル」というタイトル自体が、胎児を包む子宮を連想させると同時に、小さな空間に閉じ込められた様子は、まるで静物画のような印象も与えます。

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