## マキャヴェッリの君主論の評価
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政治思想史における評価
『君主論』は、ニッコロ・マキャベリが1513年に著した政治論の書であり、その後の西洋政治思想に多大な影響を与えた。 ルネサンス期のフィレンツェ共和国書記官として、また外交官として活躍したマキャベリの経験に基づき、君主がいかにして権力を獲得し、維持すべきかを冷徹な現実主義に基づいて論じている。
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道徳と政治の分離
『君主論』は、伝統的な政治思想とは異なり、君主の行動規範をキリスト教的倫理観から切り離し、政治における「現実主義」を主張した点で画期的であった。マキャベリは、君主が権力を維持するためには、時に冷酷さや欺瞞、非情な手段さえも必要となると説いた。
この「目的が手段を正当化する」という考え方は、当時の道徳観念からすれば、まさに「 Machiavellism(マキァベリズム)」=「目的のためには手段を選ばない狡猾さ」と解釈され、非難の対象となった。
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現実主義に基づく政治分析
マキャベリは、理想論ではなく、人間の本性を鋭く観察し、歴史的事実を分析することによって、現実の政治における権力闘争のメカニズムを解き明かそうとした。 彼は、『君主論』の中で、君主が直面する様々な政治状況を想定し、それぞれの場合においてどのような戦略や戦術を用いるべきかを具体的に論じている。
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後世への影響
『君主論』は、出版当初は禁書とされたものの、その後も政治家や思想家の間で広く読まれ、政治学の古典として現代に至るまで影響を与え続けている。 その一方で、マキャベリの思想は、権謀術数を肯定するもの、政治における倫理を軽視するものとして、批判的に評価されることもある。