## マイモニデスの迷える者の手引きと人間
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マイモニデスの迷える者の手引き
「迷える者の手引き」(Dalalat al-Hairin) は、12世紀のユダヤ教の学者であり哲学者であったモーシェ・ベン・マイモーン(マイモニデス)によって書かれた哲学書です。原典はアラビア語で書かれ、ヘブライ語にも翻訳されました。この書は、ユダヤ教の伝統的な教えとアリストテレス哲学との調和を図りながら、神、宇宙、人間の本質、預言、悪の問題、魂の不死、来世など、様々な神学的な問題を扱っています。
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人間理解における「迷える者の手引き」
マイモニデスは、「迷える者の手引き」の中で人間を、理性、欲望、感情の三つの要素からなる存在として捉えています。彼は、人間を他の動物と区別するものは理性であり、神に近づくための道も理性を通してであると主張します。
マイモニデスは人間の究極的な目的を、神への知的認識を獲得することと定義しています。彼は、人間は神を完全に理解することはできないまでも、理性を通して神の本質についてある程度の知識を得ることができると考えていました。そして、この知識の追求こそが人間の最高の幸福と徳につながるとしました。
「迷える者の手引き」は、人間の道徳的な生活についても深く考察しています。マイモニデスは、倫理的な行動は理性に基づくべきであり、中庸の徳を重視しました。彼は、人間の欲望と感情は制御され、理性に従属する必要があると主張しました。
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「迷える者の手引き」の影響
「迷える者の手引き」は、ユダヤ思想に多大な影響を与えただけでなく、中世のキリスト教やイスラム教の世界にも大きな影響を与えました。 トマス・アクィナスやイブン・ルシュドなど、多くの哲学者や神学者がマイモニデスの思想から影響を受けました。