## マイネッケの歴史主義の成立の普遍性
歴史主義の成立と普遍性の問題
フリードリヒ・マイネッケの主著『歴史主義の成立』(1936年)は、歴史主義の誕生と展開を、ヴィーコからランケに至るまでの歴史家の系譜を通じて描き出した記念碑的な著作として知られています。 マイネッケは、歴史主義を単なる歴史研究の方法論ではなく、近代ヨーロッパ精神史における一大転換点と捉え、「個体発生は系統発生を繰り返す」という生物学の法則になぞらえ、歴史主義の成立を「近代人の歴史的意識の觉醒」と位置付けました。
しかし、マイネッケの歴史主義理解、特にその普遍性を巡っては、多くの議論が交わされてきました。 例えば、彼が提示した歴史主義の系譜は、あくまでもヨーロッパ中心的なものであり、中国やイスラム世界における歴史記述の伝統を十分に踏まえているとは言えません。 また、マイネッケが重視した「個体的」な歴史認識は、ナショナリズムや相対主義を招きやすく、普遍的な歴史認識の構築を阻害する危険性も孕んでいるという批判もあります。
マイネッケの歴史主義理解における普遍主義的要素
一方で、マイネッケの歴史主義理解には、普遍主義的な要素も内包されているという指摘もあります。 例えば、彼が強調した「個性の歴史性」という概念は、あらゆる歴史的事象が、唯一無二の時間と場所の中で展開されることを意味しており、これはヨーロッパの歴史だけに限定されるものではありません。
また、マイネッケは、歴史主義を単なる相対主義ではなく、「個別の歴史的事実に対する敬虔な眼差し」を通じて、歴史の背後にある普遍的な法則を見出そうとする試みであるとも捉えていました。 このように、マイネッケの歴史主義理解には、普遍主義的な側面と相対主義的な側面が複雑に絡み合っており、その評価は一筋縄ではいきません。