マイネッケの歴史主義の成立に関連する歴史上の事件
ドイツ観念論の影響
マイネッケの歴史主義は、カント、フィヒテ、シェリング、ヘーゲルといったドイツ観念論の伝統から大きな影響を受けました。特にヘーゲルの歴史哲学は、歴史が精神の自己展開であるとする壮大な体系を提示し、マイネッケの思想形成に深い影響を与えました。ヘーゲルは、歴史を理性的なプロセスと捉え、そこには必然性と目的が存在すると考えました。
しかし、マイネッケはヘーゲルの歴史哲学を批判的に継承しました。ヘーゲルは歴史を抽象的な理念の展開として捉えていましたが、マイネッケは歴史を具体的な個人や集団の行為の結果として捉えるべきだと考えました。彼は、歴史は個々の時代の特殊な状況と個人の自由な選択によって形作られるのであり、普遍的な法則によって決定されるものではないと主張しました。
ランケと史料批判
マイネッケの歴史主義は、同時代の歴史家レオポルト・フォン・ランケの史料批判の方法論にも深く影響を受けました。ランケは、歴史研究においては過去の出来事をありのままに再現することが重要であると主張し、そのためには一次史料に基づいた客観的な分析が必要であると説きました。彼は、過去の出来事を現代の価値観で判断したり、特定の理論に当てはめたりすることを避け、史料が語る事実をありのままに提示することを重視しました。
マイネッケもまた、歴史研究における史料批判の重要性を認識していました。彼は、歴史家は過去の出来事を解釈する際に、自らの主観や偏見を排除し、史料に基づいて客観的な判断を下す必要があると主張しました。しかし、マイネッケはランケの客観主義にも限界を感じていました。彼は、歴史家は完全に客観的な立場を保つことはできず、自らの時代や立場に影響を受けながら歴史を解釈せざるを得ないと考えました。
19世紀後半のドイツ
マイネッケの歴史主義は、19世紀後半のドイツという時代背景の中で生まれました。この時期、ドイツはプロイセン王国を中心とした統一国家の建設に向けて大きく動き出していました。ビスマルクによる「鉄血政策」の下、プロイセンはオーストリアとの普墺戦争、フランスとの普仏戦争に勝利し、1871年にはドイツ帝国が成立しました。
このような時代状況の中で、ドイツでは国民意識が高揚し、自国の歴史や文化に対する関心が急速に高まりました。マイネッケの歴史主義は、このような時代的な要請に応えるものであり、ドイツ国民に自国の歴史に対する新しい視点を提供しました。彼は、ドイツの歴史を普遍的な歴史法則の展開として捉えるのではなく、ドイツ民族の独自の個性と発展として捉えることを強調しました。