## マイイネッケの『歴史主義の成立』の美
###
緻密な筆致で描かれる歴史叙述の変遷
マイネッケは本書において、古代ギリシャから19世紀に至るまでの歴史叙述の変遷を、膨大な文献の精読に基づきながら描き出しています。 彼の筆致はあくまでも緻密であり、それぞれの時代の歴史観や歴史叙述の特徴を、具体的な史料や歴史家の言説を丁寧に引用しながら浮き彫りにしていきます。
###
歴史家たちの思想に肉薄する解釈の深さ
本書の魅力は、単なる歴史叙述の羅列に留まらない点にあります。マイネッケは、取り上げる歴史家一人ひとりの思想や歴史観を深く掘り下げ、その背景にある時代精神や知的潮流との関連性を明らかにしようと試みています。例えば、ヘロドトスやトゥキディデスの歴史観を、古代ギリシャのポリス社会や運命観と結びつけたり、ブルクハルトのルネサンス論を、19世紀ドイツにおける歴史主義の隆盛という文脈の中に位置づけたりしています。
###
歴史叙述における主観と客観のせめぎ合い
マイネッケは、歴史叙述における主観と客観の問題にも深く切り込んでいます。彼は、歴史家は過去の出来事をありのままに記述することはできず、必ず自らの立場や価値観を通して歴史を解釈せざるを得ないことを指摘します。その上で、歴史家がどのようにして主観性を抑制し、可能な限り客観的な歴史叙述に近づこうとしてきたのかを、具体的な事例を交えながら考察しています。
###
現代にも通じる歴史認識論
『歴史主義の成立』は、20世紀初頭に書かれた書物ですが、その内容は現代の歴史認識論にも大きな影響を与え続けています。マイネッケが提起した、歴史叙述における主観と客観の問題や、歴史家の解釈の多様性といった問題は、現代においても重要な論点となっています。本書を読むことで、我々は歴史認識の本質について改めて考えさせられるとともに、歴史学という学問の奥深さを実感することになるでしょう。