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ポーリングの化学結合論の表現

## ポーリングの化学結合論の表現

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共鳴

ポーリングの化学結合論において、共鳴は中心的な概念の一つです。古典的な原子価結合理論では、分子内の原子は単一のルイス構造式で表され、電子は特定の原子間に局在しているとされていました。しかし、多くの分子、特にベンゼンなどの共役系を持つ分子では、単一のルイス構造式ではその性質を十分に説明できません。

ポーリングは、このような分子を記述するために、複数のルイス構造式の重ね合わせとして表現することを提案しました。それぞれのルイス構造式は「共鳴構造」と呼ばれ、実際の分子はこれらの共鳴構造の「共鳴混成体」として存在すると考えます。重要なのは、共鳴構造はあくまで形式的な表現であり、実際の分子がこれらの構造の間で振動したり、平衡状態にあるわけではないということです。

共鳴混成体は、どの共鳴構造とも同一ではなく、それぞれの共鳴構造の寄与を反映した平均的な構造として理解されます。共鳴構造の寄与は、その構造の安定性によって異なり、より安定な構造がより大きく寄与します。

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混成軌道

ポーリングは、分子の幾何構造を説明するために、原子価結合理論に「混成軌道」の概念を導入しました。混成軌道は、原子内の異なる種類の原子軌道(s軌道、p軌道など)が混ざり合ってできる新しい軌道です。

例えば、炭素原子は基底状態で2s軌道に2個、2p軌道に2個の電子を持っていますが、メタン(CH4)のような分子では、炭素原子は4つの等価な結合を形成します。これは、2s軌道と3つの2p軌道が混成して、4つの等価なsp3混成軌道を形成することで説明されます。

混成軌道の形状や方向は、混成に用いられる原子軌道の種類や数によって決まります。sp3混成軌道は正四面体構造を、sp2混成軌道は平面三角形構造を、sp混成軌道は直線構造を形成します。

混成軌道の概念は、分子の形状や結合角を理解する上で非常に有用であり、今日でも広く用いられています。

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