## ポーの黒猫の表象
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黒猫の二面性
「黒猫」において、黒猫は単なる動物ではなく、より複雑な象徴として描かれています。語り手の心理状態を反映する存在として、善と悪、愛情と憎悪、理性と狂気といった相反する二面性を体現しています。
物語の冒頭では、語り手はプルートーを「お気に入りの動物で、遊び仲間だった」と述べており、愛情深い関係性が示唆されます。しかし、アルコール依存症によって語り手の精神状態が悪化するにつれて、プルートーへの態度は暴力的で残酷なものへと変貌していきます。
この変化は、語り手の内面に潜む闇や狂気を象徴していると考えられます。プルートーは語り手の良心や理性の一部を象徴しており、彼を虐待することで、語り手自身の精神が崩壊していく様子が浮き彫りになります。
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黒猫と超自然的な要素
プルートーの死後、姿を現す第二の黒猫は、超自然的な要素を作品にもたらします。この猫はプルートーと酷似していますが、胸に白い模様がある点が異なります。
語り手は、この模様が絞首台の形に変化していくと恐怖し、この猫を超自然的な存在、あるいはプルートーの復讐者と見なすようになります。
黒猫が実際に超自然的な存在なのか、それとも語り手の狂気によって作り出された幻覚なのかは、明確には語られていません。しかし、この曖昧さが、読者に恐怖と不安を与えるとともに、理性と狂気の境界線を曖昧にする効果を生み出しています。
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黒猫の眼と視線
「黒猫」において、猫の眼は重要なモチーフとして繰り返し登場します。語り手は、プルートーの眼を抉り出したことを深く後悔し、第二の黒猫の眼に恐怖を感じます。
猫の眼は、語り手の罪と良心の呵責を映し出す鏡のような役割を果たしています。また、語り手の精神状態が悪化するにつれて、猫の眼に対する恐怖心は増大し、彼の狂気が加速していく様子が強調されます。
さらに、猫の視線は、語り手を監視し、追跡しているかのような印象を与えます。これは、語り手の罪の意識と、逃れることのできない運命を暗示しているとも解釈できます。