## ポーのモルグ街の殺人
### 時間の要素
「モルグ街の殺人」において、時間という要素は事件の謎を深め、読者を混乱させるために巧みに利用されています。以下に、作中で時間に関する描写を具体的に見ていきましょう。
### 時間と密室トリック
物語冒頭、殺人事件が起きた時間帯は「夜遅く」としか記されていません。しかし、物語が進むにつれて、隣人たちの証言から、殺害されたマダム・レスパネーと娘のカミーユが悲鳴をあげた時間帯が少しずつ明らかになっていきます。
それぞれの証言は微妙に異なっており、正確な時間の一致を見ません。この時間のずれは、一見すると些細な detail のように思えますが、密室状態の部屋でどのように犯行が行われたのかという謎をより複雑にする要素となっています。
### 語り手の時間感覚
語り手である「私」と探偵デュパンは、事件の4日後に現場を訪れます。すでに警察による捜査は終了しており、部屋には事件当時の状態が保たれています。
「私」は、デュパンの推理を聞きながら、事件当時の状況を頭の中で再現しようと試みます。しかし、すでに数日という時間が経過しているため、「私」は事件の真相に近づくどころか、ますます混乱していく様子が描かれています。
### 新聞記事の時間情報
デュパンは、事件に関する情報を集めるために新聞記事を読み漁ります。記事には、事件発生の時間や目撃者の証言など、詳細な情報が掲載されています。
しかし、これらの情報は必ずしも正確であるとは限りません。新聞記事はあくまでも事件の表面的な部分を切り取ったものであり、真実にたどり着くためには、その背後に隠された時間にまつわる矛盾や謎を解き明かす必要があるのです。