## ボワソナードの刑法草案註解の構成
###
序説
ボワソナード刑法草案註解は、フランス人法学者ギュスターヴ・エミール・ボアソナードが、明治政府の依頼を受けて起草した刑法草案に対する詳細な解説書です。本註解は、単に条文の解釈を羅列するだけでなく、近代刑法の理念、各国の立法例、そして日本の歴史や社会状況を踏まえた上で、草案全体の体系的な理解を促すことを目的としています。
###
構成
ボワソナード刑法草案註解は、以下の3つの主要な部分から構成されています。
1. **総論**: 刑法の基礎となる概念や原則を網羅的に解説する部分です。具体的には、刑罰の目的、犯罪の構成要件、責任の概念、刑の免除事由、時効など、刑法の適用に関する基本的な問題を扱います。
2. **分論**: 個々の犯罪類型について、条文ごとに詳細な解説を加えた部分です。殺人罪や窃盗罪といった具体的な犯罪について、その構成要件、法定刑、未遂犯や共犯の扱いなどを詳しく説明します。
3. **附録**: 草案とは直接関係しないものの、参考資料として追加された部分です。例えば、外国の刑法典の翻訳や、ボワソナード自身の見解をまとめた論文などが含まれます。
###
註解の特徴
ボワソナード刑法草案註解は、以下の点が特徴として挙げられます。
* **体系性**: 各条文の解説にとどまらず、刑法全体を貫く理念や原則を明確化し、体系的な理解を促しています。
* **比較法的な視点**: フランス法を基盤としながらも、ドイツやイタリアなど、当時の先進的な刑法理論も幅広く紹介し、比較法的な観点から草案の妥当性を論じています。
* **日本の状況への配慮**: 日本の伝統的な法文化や社会状況にも配慮し、単に西洋法を移植するのではなく、日本社会に適合した刑法典の構築を目指しています。
これらの特徴から、ボワソナード刑法草案註解は、単なる法解釈の書物ではなく、近代日本の刑法学の基礎を築いた金字塔として、今日でも高い学術的価値を有しています。