ボワソナードの刑法草案註解の位置づけ
ボワソナードと日本の近代法典編纂
フランス人法学者ギュスターヴ・エミール・ボアソナード(Boissonade de Fontarabie, Gustave Émile, 1825 – 1910)は、明治政府の招聘に応じて1873年(明治6年)に来日し、1895年(明治28年)までの20年以上にわたり、日本の法整備事業に貢献しました。
刑法草案註解の成立
ボアソナードは、司法省の法律顧問として、刑法や民法などの法典編纂に携わりました。彼はフランス法に精通していましたが、日本の歴史、伝統、慣習を深く理解し、単なる西洋法の模倣ではなく、日本社会に適合した法体系の構築を目指しました。
その中でも特筆すべき業績の一つが、「刑法草案註解」です。これは、1880年(明治13年)に起草された旧刑法(1882年施行)の基礎となった「旧刑法草案」に対する詳細な解説書です。ボアソナードは、条文ごとにその解釈、根拠、関連法理などを詳細に解説し、日本の法曹関係者に近代法の理念と運用を理解させようとしました。
刑法草案註解の影響
「刑法草案註解」は、日本の近代刑法の礎を築く上で多大な影響を与えました。ただし、同書はフランス語で書かれていたため、当時の日本人には容易に理解できるものではありませんでした。そこで、司法省は翻訳に着手し、1882年(明治15年)に「仏国ボワソナード氏著刑法註釈書」として刊行しました。
歴史的価値
「刑法草案註解」は、単なる法解釈書を超えて、近代日本の法形成過程を知る上で貴重な歴史的資料としての価値も持っています。ボアソナードの思考や法哲学、当時の日本社会の状況などが読み取れる貴重な文献と言えるでしょう。
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