## ボルヘスのバベルの図書館の選択
図書館の構造における選択
ボルヘスの「バベルの図書館」では、図書館の構造そのものが一種の選択を体現しています。
図書館は、六角形の部屋が無限に続く構造を取っており、各部屋には同じ形状と内容の本棚が配置されています。この構造は、以下の二つの重要な選択を暗示しています。
* **有限と無限の選択:** 図書館は無限に広がっている一方、各部屋の構造や本の数は有限です。これは、無限の可能性の中にも有限の制約が存在することを示唆しています。
* **同一性と差異の選択:** 全ての部屋が同じ構造を持つ一方で、収められた本の内容は全て異なります。これは、無限の組み合わせの中から、意味を持つものと持たないものがランダムに選択されていることを示唆しています。
図書館員の行動における選択
図書館に住む図書館員たちは、この無限の迷宮の中での存在に直面し、それぞれ異なる選択を行います。
* **探索の選択:** 一部の図書館員は、「真の書物」や「深紅の六角形」といった伝説の場所を探し求め、図書館を旅し続けます。彼らは、無限の可能性を信じ、真実を求める選択を行っています。
* **諦観の選択:** 一方、無限の迷宮に絶望し、無作為に本を選びながら目的もなく生活する図書館員もいます。彼らは、選択の無意味さに直面し、希望を放棄しています。
* **創造の選択:** また、自ら「真の書物」を書き写そうとする図書館員もいます。彼らは、図書館の構造に内在する制約の中で、独自の秩序と意味を創造しようと試みています。
「バベルの図書館」における選択の不在
重要なのは、「バベルの図書館」は、特定の選択を推奨したり、その結果を明示したりする物語ではないということです。
ボルヘスは、無限の可能性と有限の存在という矛盾、意味の探求と無意味への直面、秩序への渇望と混沌への絶望といった対照的な要素を提示することで、人間の選択の複雑さと多様性を浮かび上がらせています。