ボルヘスのバベルの図書館に影響を与えた本
影響を与えた作品: アナトール・フランスの「紅玉書房」
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「バベルの図書館」は、その広大で不可解な性質から、文学史上最も重要な短編小説の一つと考えられています。現実と虚構の境界があいまいになる迷宮のような図書館を描いたこの作品は、読者に畏怖の念と不安感を与えます。「バベルの図書館」のインスピレーションの源泉として、様々な作品が挙げられていますが、その中でも特に重要なのが、アナトール・フランスの短編小説「紅玉書房」 (1896年) です。
無限の図書館の概念:
「紅玉書房」は、パリの古書店を舞台とした物語で、博識で謎めいた書物商バンタルダン氏が主人公です。彼は、あらゆる知識が収められた、想像を絶するほど巨大な図書館の番人であると主張しています。フランスはこの図書館を、想像を絶するほど膨大な数の書物で満たされた、広大で入り組んだ迷宮として描写しています。この無限の図書館という概念は、ボルヘスの「バベルの図書館」の核となる要素であり、世界のすべての書物が収められた、同様に広大で謎めいた図書館を描いています。どちらの作品においても、図書館は、知識の広大さと、それを完全に理解することの不可能性を象徴するものとして機能しています。
秩序と無秩序のテーマ:
「紅玉書房」と「バベルの図書館」の両作品において、秩序と無秩序というテーマが重要な役割を果たしています。フランスの図書館は、一見、混沌としているように見えますが、バンタルダン氏は、そこには隠された秩序があると主張しています。彼は、すべての書物が互いにつながっており、注意深く探せば、究極の真実を見つけることができると信じています。同様に、ボルヘスの図書館も厳格な法則に基づいて組織されていますが、その広大さと複雑さゆえに、図書館員は全体像を把握することができません。秩序と無秩序の共存は、宇宙の性質と、人間がそれを理解しようと奮闘する姿について、疑問を投げかけています。
知識の限界:
2つの作品の共通するテーマとして、知識の限界があります。フランスのバンタルダン氏は、世界のすべての書物を所有しているにもかかわらず、依然として真実を求めています。彼は、知識は無限であり、人間が完全に理解できる範囲を超えていることを認識しています。同様に、「バベルの図書館」の図書館員も、自分たちの周りの無限の知識に圧倒され、落胆しています。彼らは、知識は無限であるにもかかわらず、人間の理解力は限られているという事実と格闘しています。
知識の不条理さ:
「紅玉書房」と「バベルの図書館」はどちらも、ある程度、知識の不条理さを浮き彫りにしています。フランスの図書館には、あらゆる知識が網羅されている一方で、無意味な内容や反復的な文章が書かれた書物も大量に含まれています。このことから、真の知識の追求は、無駄で実りのない努力なのではないかと疑問を抱かせます。同様に、ボルヘスの図書館員も、目的や意味を見いだせずに、無限の書物の迷宮の中をさまよっています。この不条理な視点は、知識の本質と、人生におけるその役割について、根本的な疑問を投げかけています。
結論として、「アナトール・フランスの紅玉書房」は、「バベルの図書館」の創作に大きな影響を与えた作品です。無限の図書館、秩序と無秩序、知識の限界、知識の不条理さといったテーマを探求することで、フランスの作品は、ボルヘス自身の文学的傑作の舞台と概念的な枠組みを提供することになりました。