ボナールの友情論の対極
ショーペンハウアー『<人間の本性について>』における利己主義
アルチュール・ショーペンハウアーの主著『意志と表象としての世界』の副産物として書かれた『人間の本性について』は、人間存在の根底に潜む利己主義を容赦なく暴き出すことで、ボナールの友情論とは全く異なる人間観を提示しています。
ショーペンハウアーによれば、人間の本質は盲目的な意志であり、それは絶え間ない欲望と欠乏感に駆り立てられています。
この意志は、他者を自己の目的達成のための手段としか見なさず、真の意味での共感や利他心を持つことはできません。
ニーチェ『<ツァラトゥストラはかく語りき>』における超人への意志
フリードリヒ・ニーチェの代表作『ツァラトゥストラはかく語りき』では、旧来の価値観を乗り越え、力強く自己を肯定する「超人」という理想が提示されます。
ニーチェは、友情を含む従来の人間関係を、「最後の人の群れ」として批判します。
「最後の人の群れ」は、安逸と平凡さを求め、自己の弱さを克服しようとしない、退廃的な人間像として描かれます。
ニーチェは、超人となるためには、既存の道徳や価値観から自由になり、孤独を恐れずに自己を創造していく必要があると説きます。
この思想は、友情や共感を重視するボナールの立場とは明確に対立するものです。