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# ボッカチオのデカメロンを深く理解するための背景知識

# ボッカチオのデカメロンを深く理解するための背景知識

1.黒死病(ペスト)の蔓延

デカメロンは、14世紀半ばのヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)の大流行を背景に物語が展開されます。ペストは、当時のヨーロッパの人口の3分の1から半分を死に至らしめたとされる、未曽有の災厄でした。フィレンツェも例外ではなく、多くの人々がペストによって命を落としたり、恐怖に怯えながら生活していました。デカメロンの冒頭では、このペストの惨状が生々しく描写されています。人々はペストを避けるため、都市から郊外へと逃れ、隔離生活を送ることもありました。デカメロンの物語は、ペストから逃れた10人の男女がフィレンツェ郊外の別荘で過ごす2週間の間に、それぞれが語る100の物語から構成されています。物語の内容は多岐にわたりますが、ペストによって混乱し、死の影に覆われた当時の社会や人々の心理状態を反映したものも多く含まれています。

2.中世ヨーロッパの社会構造

デカメロンが書かれた14世紀のヨーロッパは、封建制と呼ばれる社会構造が支配的でした。封建制では、国王を頂点として、貴族、騎士、農民といった階層的な身分制度が存在し、それぞれの身分には異なる権利と義務が定められていました。デカメロンの物語には、様々な身分の登場人物が登場し、当時の社会構造や身分間の関係性が反映されています。例えば、貴族や騎士は高い身分と権力を持ち、贅沢な暮らしを送る一方で、農民は厳しい労働に従事し、貧しい生活を送っていました。また、教会は大きな権力と影響力を持っており、人々の生活に深く関わっていました。デカメロンには、聖職者や修道士が登場する物語も多く、当時の教会の腐敗や堕落を描いたものも含まれています。

3.ルネサンスの萌芽

14世紀のイタリアは、ルネサンスと呼ばれる文化運動の萌芽期にありました。ルネサンスは、古代ギリシャ・ローマの文化を復興しようとする運動であり、文学、芸術、科学など様々な分野で新たな発展が見られました。デカメロンは、ルネサンスの影響を受けた作品であり、人間中心主義的な思想や、現実社会に対する批判的な視点が反映されています。デカメロンの物語には、恋愛、冒険、知恵、ユーモアなど、人間の様々な側面が描かれており、中世的な宗教観や道徳観にとらわれない、自由な人間像が提示されています。また、デカメロンはイタリア語で書かれており、ラテン語ではなく、民衆の言葉で文学作品を創作しようとする、ルネサンスの精神を体現しています。

4.フィレンツェの都市国家

デカメロンの舞台であるフィレンツェは、14世紀当時、イタリアを代表する都市国家の一つでした。フィレンツェは、商業と金融業で栄え、裕福な商人や銀行家が多く住んでいました。また、フィレンツェは、芸術や文化の中心地でもあり、多くの芸術家や知識人が活躍していました。デカメロンには、フィレンツェの活気ある都市生活や、商人たちの活動が描かれています。また、フィレンツェの方言が使われていることも、デカメロンの特徴の一つです。

5.物語集としての特徴

デカメロンは、100の物語から構成される物語集であり、「枠物語」と呼ばれる形式を採用しています。枠物語とは、複数の物語を内包する、大きな物語の枠組みのことです。デカメロンでは、ペストから逃れた10人の男女が、フィレンツェ郊外の別荘で過ごす2週間の間に、それぞれが毎日1つずつ物語を語るという設定が、枠物語となっています。それぞれの物語は独立していますが、共通のテーマやモチーフによって結びついている場合もあります。また、物語の語り手である10人の男女は、物語の内容について意見交換したり、批評し合ったりすることもあり、物語と物語の間に相互作用が生じています。この枠物語の構造は、デカメロンの魅力の一つであり、読者は様々な物語を楽しむと同時に、物語を語る人々の様子や、物語に対する反応を通して、当時の社会や文化を垣間見ることができます。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。

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