## ボッカチオのデカメロンの選択
ボッカチオのデカメロンにおける「選択」の多様性
ジョヴァンニ・ボッカチオの『デカメロン』は、ペスト禍から逃れた男女10人が10日間にわたって語り合う100の物語集です。作品全体を通して、「選択」という行為とその帰結が様々な形で描かれます。
物語を語る「選択」
まず、大枠として、『デカメロン』自体が、物語を語るという行為を選択した結果生まれた作品と言えるでしょう。語り手たちは、ペスト禍という死と隣り合わせの現実から逃れるため、フィレンツェを離れ、田舎の別荘で共同生活を送ることを選択します。そして、退屈を紛らわすため、毎日一人一話ずつ物語を語ることを決めます。
物語の内容における「選択」
100の物語は、恋愛、冒険、策略、商人や聖職者の滑稽な逸話など、多岐にわたるテーマを扱っています。各話においても、登場人物たちは様々な選択を迫られます。例えば、恋愛においては、結婚相手、愛人、貞節など、人生を左右する選択が頻繁に登場します。また、権力や財産を巡る争いにおいても、登場人物たちは、自分の欲望を満たすために、時には倫理的に問題のある選択をすることもあります。
「語り」と「現実」の対比における「選択」
『デカメロン』では、「物語の世界」と「現実の世界」が対比構造として描かれています。ペスト禍という過酷な現実から逃れるために集まった語り手たちは、「物語の世界」に没頭することで、一時的に現実を忘れることを選択します。しかし、物語の終わりには、彼らを待ち受ける現実世界の影が再び浮かび上がります。
「枠物語」における「選択」
『デカメロン』は、「枠物語」と呼ばれる構造を持っています。10人の語り手たちによる現実世界でのやりとりが、100の物語の「枠」として機能しています。各話の冒頭と終わりには、語り手たちの会話や行動が挿入され、物語の世界と現実世界をつないでいます。この「枠物語」においても、語り手たちは、物語のテーマや語り方、登場人物の行動などについて議論し、様々な選択を行っています。