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ボッカチオのデカメロンの評価

## ボッカチオのデカメロンの評価

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文学史における位置づけ

「デカメロン」は、14世紀イタリアの作家ジョヴァンニ・ボッカチオによって書かれた物語集です。 黒死病が蔓延するフィレンツェを舞台に、男女10人がペスト禍を避けて郊外の別荘に避難し、10日間かけて1人1話ずつ、合計100の物語を語り継ぐという構成になっています。

「デカメロン」は、ダンテの「神曲」とともに、イタリア文学の基礎を築いた作品と評価されています。 それ以前の中世ヨーロッパ文学が宗教的・道徳的な主題を扱っていたのに対し、「デカメロン」は、人間の欲望や機知、ペスト禍の恐怖といった、より現世的なテーマを扱っています。 この作品は、ルネサンス期の人間中心主義を先取りするものであり、後のヨーロッパ文学に大きな影響を与えました。

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物語の多様性と魅力

「デカメロン」の魅力は、その多彩な物語群にあります。 恋愛譚、滑稽譚、教訓譚など、幅広いジャンルの物語が、登場人物たちの個性的な語り口によって生き生きと描写されています。 高貴な騎士や聖職者から、商人、農民、さらには詐欺師や盗賊まで、様々な階層の人物が登場し、それぞれの立場や境遇を反映した物語を展開します。

ボッカチオは、巧みな話術と人間観察の鋭さによって、読者を飽きさせずに物語の世界に引き込みます。 特に、恋愛における人間の心理描写は秀逸であり、現代の読者にとっても共感できる点が多いと言えるでしょう。

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社会風刺と批判精神

「デカメロン」は、単なる娯楽作品ではなく、当時の社会に対する鋭い風刺と批判精神が込められています。 聖職者の腐敗や堕落、貴族の傲慢さ、結婚制度の矛盾などが、物語を通して痛烈に批判されています。 ボッカチオは、教会や権力者を笑いものにすることで、既存の社会秩序に疑問を呈し、人間の自由と理性に基づく新しい価値観を提示しようとしました。

また、「デカメロン」は、ペスト禍という未曾有の災厄が引き起こした社会の混乱と人々の心理を克明に描き出しています。 ペスト禍は、当時の社会の矛盾を露呈させると同時に、人間の生と死に対する意識を大きく変えました。 ボッカチオは、この歴史的な出来事を背景に、人間の弱さと強さ、愚かさと賢さ、そして何よりも生きる喜びを鮮やかに描き出しています。

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