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ボッカチオのデカメロンの思想的背景

ボッカチオのデカメロンの思想的背景

1. ペスト禍がもたらした社会不安と死生観の変化

「デカメロン」は、1348年にイタリアを襲ったペスト禍を背景に書かれました。当時、ペストは治療法のない致死性の病気であり、人々に大きな恐怖と絶望を与えました。社会秩序は崩壊し、宗教的な戒律も意味をなさなくなりました。

このような状況下で、人々の死生観は大きく変化しました。明日をも知れぬ不安の中、現世での享楽を求める風潮が強まりました。従来の道徳観や宗教観が揺らぎ、新たな価値観が求められたのです。

2. ルネサンスの萌芽 – 人間中心主義の台頭

「デカメロン」が書かれた14世紀イタリアは、ルネサンスの萌芽が見え始めた時代です。中世的な神中心主義から、人間 Reasonや人間の感情を重視する人間中心主義へと価値観が移り変わりつつありました。

ボッカチオ自身も、古典文学や人文主義に傾倒していました。「デカメロン」には、教会や聖職者を風刺する一方で、人間の知恵や機知、恋愛感情を肯定的に描く場面が数多く見られます。これは、当時の社会における人間中心主義の台頭を反映していると言えるでしょう。

3. 多様な価値観の共存 – 聖と俗の交錯

「デカメロン」は、聖と俗、高尚と卑俗、理性と欲望など、相反する価値観が複雑に交錯する作品です。敬虔な信仰心を持つ人物が登場する一方で、教会の権威を嘲笑うような話も描かれます。

これは、当時の社会における価値観の多様性を反映していると考えられます。中世的な価値観が根強く残る一方で、ルネサンス的な新しい思想も広まりつつあり、人々は両者の間で揺れ動いていたのです。「デカメロン」は、そうした時代の空気感を鮮やかに描き出しています。

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