## ボッカチオのデカメロンの対称性
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構造的な対称性
『デカメロン』は、14世紀のイタリアの作家ジョヴァンニ・ボッカッチョによって書かれた物語集です。基本的な構造は、ペストから逃れた10人の男女(7人の女性と3人の男性)がフィレンツェ郊外の邸宅に避難し、10日間にわたって毎日一人一話ずつ、合計100の物語を語り合うというものです。
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枠物語の対称性
物語は、この10人の語り手たちの物語を囲む「枠物語」と、彼らが語る100の物語から成り立っています。 この枠物語自体が対称的な構造を持っています。10日間のうち、最初の1日と最後の10日目はテーマが自由であり、2日目から9日目まではそれぞれ日ごとに異なるテーマが設定されています。
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日毎のテーマ
2日目から9日目までの日毎のテーマは以下の通りです。
* 2日目:運命のいたずら
* 3日目:愛の成就
* 4日目:悲恋
* 5日目:恋愛成就
* 6日目:機知に富んだ言葉
* 7日目:夫婦の策略
* 8日目:男女の騙し合い
* 9日目:自由テーマ
これらのテーマは、必ずしも明確な対称性を示しているわけではありません。
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物語間の対称性
100の物語の中には、テーマやモチーフ、登場人物の性格などが類似しているものがあり、対照的な関係をなしているものも見られます。 例えば、ある物語で男性が女性を騙す話が語られる一方、別の物語では女性が男性を出し抜く話が語られるなど、男女の立場が逆転した物語が対になって登場することがあります。
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対称性の解釈
『デカメロン』における対称性は、単なる形式的なものではなく、ボッカッチョの思想や世界観を反映していると考えられています。 例えば、物語全体の構成は、ペスト禍という混沌とした現実と、秩序と調和を重んじるルネサンスの精神との対比を表しているという解釈があります。 また、男女の立場が逆転した物語を対比させることで、当時の社会における男女の役割や関係性について問題提起をしているという解釈もあります。