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ボッカチオのデカメロンの光と影

## ボッカチオのデカメロンの光と影

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黒死病という影

「デカメロン」は、14世紀半ばにヨーロッパを襲ったペストの大流行、黒死病を背景に物語が展開されます。物語の冒頭では、ペストの惨状が生々しく描写されており、死の恐怖が社会全体に蔓延し、人々の道徳や理性、信仰心を蝕んでいく様子が克明に描かれています。これは紛れもなく「デカメロン」における大きな「影」と言えるでしょう。

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語りによって灯される光

ペスト禍という絶望的な状況の中、フィレンツェ郊外の別荘へと逃れた10人の男女は、10日間にわたり、日替わりでそれぞれが物語を語り合います。これは、死の影に覆われた世界に対抗するかのように、人間の知恵や機知、そして生きる喜びを謳歌する「光」の側面を象徴しています。

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人間の多面性を照らし出す光と影

「デカメロン」で語られる100の物語は、恋愛、冒険、欺瞞、機知に富んだ策略など、多岐にわたるテーマを扱っています。そこには、聖職者や貴族から庶民まで、様々な階層の人々の滑稽な姿、狡猾さ、残酷さ、そして高潔さなど、人間のあらゆる側面が描かれています。これは、善悪二元論では捉えきれない、人間存在の複雑さを浮き彫りにする「光と影」の両面を併せ持つと言えるでしょう。

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教会への批判という影

「デカメロン」には、当時のキリスト教会や聖職者を風刺する物語が多く含まれています。これは、ペスト禍における教会の無力さや、一部聖職者の腐敗に対するボッカチオの批判精神の表れと解釈されています。当時の社会において、教会や宗教に対する批判は大きなタブーであり、これは「デカメロン」における「影」の部分と言えるでしょう。

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自由な精神と再生への希望の光

「デカメロン」は、教会の権威や社会規範に囚われず、人間の自由な精神や欲望を肯定的に描いた作品として評価されています。ペスト禍という未曾有の危機を経験したボッカチオは、逆境の中でも希望を捨てず、人間本来の生命力と再生への願いを込めて、この作品を執筆したのではないでしょうか。それは「デカメロン」全体を貫く「光」と言えるでしょう。

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