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ボッカチオのデカメロンの位置づけ

## ボッカチオのデカメロンの位置づけ

### 14世紀イタリア文学における位置づけ

「デカメロン」は、ダンテの「神曲」、ペトラルカのソネット集と並んで、14世紀イタリア文学を代表する作品とされています。
「神曲」が中世的な価値観を、「カンツォニエーレ」がペトラルカ自身の内面世界を描いているのに対し、「デカメロン」は、ペスト禍という未曾有の危機を背景に、人間の本能や欲望、そして知恵を生き生きと描写しており、ルネサンスの萌芽を感じさせる作品として高く評価されています。

### 物語集としての位置づけ

「デカメロン」は、10人の男女がペストから逃れるためにフィレンツェ郊外の別荘に滞在し、10日間にわたって、一人一話ずつ、合計100の物語を語り合うという枠物語の形式をとっています。
この形式は、インドの「パンチャタントラ」、アラビアの「千夜一夜物語」などの影響を受けていると考えられており、西洋文学における枠物語の伝統に大きな影響を与えました。チョーサーの「カンタベリー物語」や、マルグリット・ド・ナヴァールの「エプタメロン」など、後世の多くの作品に影響を与えています。

### 社会風刺の書としての位置づけ

「デカメロン」に登場する100の物語は、恋愛譚、滑稽譚、教訓譚など、多岐にわたるジャンルを含んでいますが、その多くは当時の社会や宗教、人間の愚かさや狡猾さを鋭く風刺した内容となっています。
聖職者や貴族といった特権階級の偽善や堕落を痛烈に批判する一方、庶民の知恵や機転を称揚しており、当時の社会に対するボッカチオの批判的な視点を伺い知ることができます。

### イタリア語散文の発展における位置づけ

ボッカチオは、「デカメロン」において、それまで主に詩作に用いられてきたトスカーナ方言を洗練させて、生き生きとした流麗な散文を創造しました。
「デカメロン」の成功により、トスカーナ方言はイタリア語の標準語としての地位を確立し、後世の作家たちに多大な影響を与えました。ボッカチオは「イタリア語散文の父」とも呼ばれています。

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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。

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