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ボッカチオのデカメロンに影響を与えた本

ボッカチオのデカメロンに影響を与えた本

オウィディウスの変身物語

ジョバンニ・ボッカッチョの『デカメロン』は、14 世紀半ばの黒死病の大流行を背景に、10 人の若い男女がフィレンツェ郊外の別荘に避難し、10 日間にわたって一人一話ずつ物語を語るという体裁をとった物語集です。ペスト禍という未曾有の危機的状況を背景に、人間の生と性、愛と欲望、運命と偶然などが、時に滑稽に、時に残酷に、時に感動的に描かれます。

『デカメロン』に影響を与えた作品は数多くありますが、その中でも特に重要なのが、古代ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』です。『変身物語』は、天地創造からユリウス・カエサルの神格化までを、ギリシャ・ローマ神話を中心に、変身譚を織り交ぜながら叙述した長編叙事詩です。

『デカメロン』と『変身物語』の共通点は、まずその多様な物語群にあります。『デカメロン』は100 編の物語から成り、恋愛譚、滑稽譚、悲劇、教訓譚など、その内容は実に多彩です。同様に、『変身物語』もまた、数多くの神話や伝説を題材に、愛と裏切り、復讐と変身など、様々なテーマを扱っています。ボッカッチョは、『変身物語』から物語の構成やモチーフ、登場人物の造形など、多くの影響を受けたと考えられています。

また、『デカメロン』と『変身物語』は、いずれも運命の無常さ、人間の弱さ、愛の力といった普遍的なテーマを扱っています。『デカメロン』では、ペスト禍という極限状況下において、人間の欲望や愚かさが露呈されます。一方、『変身物語』でも、神々や人間の飽くなき欲望や嫉妬、裏切りによって、多くの悲劇が生まれます。両作品は、人間の生と死、愛と憎しみ、幸福と不幸といった根源的な問題を、物語を通して読者に問いかけています。

さらに、『デカメロン』と『変身物語』は、ともに流麗で洗練された文体で書かれていることも共通点として挙げられます。ボッカッチョは、当時のイタリア語の口語を用いながら、格調高く美しい文体を確立しました。一方、オウィディウスの『変身物語』は、ラテン語文学の最高峰の一つとされ、その洗練された表現は、後世の作家たちに多大な影響を与えました。ボッカッチョもまた、オウィディウスの文体から大きな影響を受けたと考えられています。

このように、『デカメロン』と『変身物語』の間には、物語の構成、テーマ、文体など、多くの共通点が見られます。ボッカッチョは、『変身物語』を綿密に研究し、そのエッセンスを自らの作品に巧みに取り入れることで、『デカメロン』という傑作を生み出したと言えるでしょう。

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