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ボッカチオのデカメロンと時間

## ボッカチオのデカメロンと時間

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時間の枠組み

「デカメロン」は、1348年のペスト禍から逃れた10人の男女がフィレンツェ郊外の丘の上で10日間にわたり、毎日一人一話ずつ、合計100の物語を語り合うという構成を取っています。この物語の外枠となる設定自体が、

* **歴史的な時間**:14世紀半ばのヨーロッパを襲ったペスト禍という具体的な歴史的時間
* **物語の時間**:10日間という限られた時間

という二つの異なる時間の流れを提示しています。

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物語内の時間操作

「デカメロン」に収められた個々の物語は、様々な時代や場所を舞台としています。聖書時代や古代ローマ、中世ヨーロッパなど、時代設定は多岐にわたり、物語が展開される時間も、数時間から数十年、あるいは数世代に及ぶものまで様々です。ボッカチオは、物語の語り手である10人の男女に異なる人物設定を与えることで、各話の語り口やテーマに変化をもたらすと同時に、物語内の時間を自在に操っています。

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時間の流れの対比

「デカメロン」では、物語の外枠となるペスト禍という極限状況における「死」のイメージと、物語世界における恋愛や冒険、あるいは滑稽な出来事といった「生」のイメージが対比されています。この対比構造は、

* **有限な時間**:人間の生命の有限性、ペスト禍という危機が突き付ける時間の制約
* **無限の時間**:物語によって創造される、時代や場所を超越した世界、想像力の無限の可能性

という時間の対比構造としても捉えることができます。

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時間の循環

10日間の物語が終わると、10人の男女はフィレンツェへと帰還し、物語の外枠となる時間は閉環します。しかし、そこで語られた100の物語は、読者の心の中で生き続け、語り継がれていくという、もう一つの時間の流れを生み出します。これは、

* **線的な時間**:ペスト禍の流行と終息、10日間の物語の始まりと終わり
* **循環的な時間**:物語の語り継ぎによって、時空を超えて再生される物語世界

という二つの異なる時間軸の交錯として解釈することができます。

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