## ボエティウスの哲学の慰めの構成
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交互に現れる散文と韻文
『哲学の慰め』は、散文と韻文が交互に織りなす独特な構成を持っています。ボエティウス自身の苦境と哲学との対話が、散文と韻文という異なる文体で展開されていきます。
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五つの章構成
作品は全体で五つの章に分けられています。各章は、ボエティウスの心の変化、そして哲学との対話を通して、慰めへと向かうプロセスを段階的に示しています。
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第一部:悲嘆と哲学の登場(第一巻)
第一巻では、不当な投獄に苦しむボエティウスの嘆きが、詩的な韻文で表現されます。そこに、擬人化された哲学が登場し、慰めの言葉をかける場面から散文による対話が開始されます。
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第二部:幸運の偽りと真の幸福(第二~第三巻)
第二巻と第三巻では、哲学はボエティウスの誤った幸福観を正していきます。かつてボエティウスが信じていた富や名誉といった外的な幸運の虚しさを暴き、真の幸福は理性的な魂の内にあることを説きます。
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第三部:神の摂理と自由意志(第四~第五巻)
第四巻と第五巻では、哲学は、ボエティウスの最大の疑問である「神の全知と人間の自由意志」という問題を扱います。悪の存在や不条理な現実に対するボエティウスの苦悩に対し、哲学は神の摂理の深遠さを説き、人間の自由意志の尊厳を明らかにします。