## ボエティウスの哲学の慰めが扱う社会問題
不正と権力の濫用
ボエティウス自身、かつてはローマ帝国で高い地位に就いていたにもかかわらず、陰謀によって失脚し、投獄されるという憂き目に遭います。
彼の著作には、当時の社会における不正や権力の横暴に対する強い怒りが表れています。 特に、無実の人間が権力者の恣意的な判断によって陥れられる不条理を、自身の体験を通して痛烈に批判しています。
ボエティウスは、真の幸福は地位や名誉、富などの外的な要因によってではなく、理性的な魂の修養によってのみもたらされると説きます。
そして、不正によって一時的に権力を握ったとしても、それは真の幸福とは無縁であるばかりか、むしろ魂を蝕む毒となると主張します。
運命と自由意志の矛盾
不当な扱いを受けながらも、ボエティウスは自身の運命に疑問を抱きます。
なぜ、善良な人間が苦しみ、悪人が栄えるのか。
「哲学の慰め」では、女神哲学との対話を通して、運命と自由意志の矛盾について深く考察していきます。
ボエティウスは、神は全知であり、人間の運命もすべて見通しているとしながらも、同時に人間には自由意志が与えられていると主張します。
そして、たとえ運命によって苦難が降りかかろうとも、人間は理性的な判断と行動によって、自身の魂を成長させることができると説きます。
人間の欲望と幸福の追求
「哲学の慰め」では、人間の欲望と幸福の関係についても論じられています。 ボエティウスは、多くの人間が富や名誉、権力といった外的なものに幸福を求めるが、それらは真の幸福をもたらさないと指摘します。
なぜなら、それらは一時的なものであり、喪失する可能性もあるからです。
真の幸福は、理性的な魂の修養によってのみ達成されるとボエティウスは主張します。
それは、永遠不滅であり、外部からの影響を受けないものだからです。
ボエティウスは、人間は欲望に振り回されるのではなく、理性に従って生きるべきだと訴えます。