## ホール のアメリカ史の解釈の価値
### ホールの歴史観について
チャールズ・オースティン・ベアードやメアリー・ビアードといった進歩主義史観の隆盛の中で、歴史家としてのホールは独自のアプローチをとっていました。彼は経済的決定論や階級闘争を歴史の主要な駆動力と見なす進歩主義史観に異議を唱え、代わりに、理念、イデオロギー、政治的リーダーシップの重要性を強調しました。
### ホールのアメリカ史解釈の特徴と貢献
彼の主要な著作である『アメリカ文明史』(1939年) において、ホールは植民地時代から20世紀初頭までのアメリカの政治、社会、文化の発展を包括的に分析しました。
彼の歴史観はいくつかの重要な要素を含んでいます。
* **アメリカにおける自由と権力の緊張関係**: ホールはアメリカの建国以来、個の自由と社会秩序の維持、中央集権化された権力との間で常に緊張関係が存在してきたと主張しました。彼はこの緊張関係を、植民地時代の自治の伝統、独立革命、合衆国憲法制定会議、そしてジャクソン時代の大衆民主主義の台頭といった歴史的事象を通して分析しました。
* **アメリカ例外主義への批判**: 当時の一般的な見解であった、アメリカは他の国とは異なる特別な運命を背負っているという「アメリカ例外主義」に対して、ホールは批判的な立場を取りました。彼はアメリカの歴史を、ヨーロッパの歴史と断絶したものではなく、むしろヨーロッパの思想や制度の影響を受けながら発展してきたものと捉えました。
* **コンセンサス史観**: ホールはアメリカの歴史を、階級闘争や革命ではなく、共通の価値観や理念に基づくコンセンサスによって形作られてきたと主張しました。彼はアメリカ社会における多様なグループが、自由、民主主義、機会の平等といった共通の価値観の下で共存し、国家の発展に貢献してきたことを強調しました。
### ホールの影響と評価
ホールの著作は、アメリカ史の解釈に大きな影響を与え、特に1950年代以降の「コンセンサス史観」の台頭に貢献しました。彼の著作は、アメリカ史における政治思想、イデオロギー、リーダーシップの役割に対する関心を再燃させ、後の世代の歴史家に影響を与えました。