## ホワイトヘッドの観念の冒険の感性
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ホワイトヘッドにおける「感性」の多義性
ホワイトヘッドの哲学において、「感性」は極めて重要な概念ですが、その意味は一義的ではありません。文脈に応じて、少なくとも以下の3つのレベルの意味合いを使い分けています。
1. **認識論的な意味での感性**: これは、外界からの刺激を受け取る感覚器官の働き、あるいはその働きによって得られる感覚データそのものを指します。ただし、ホワイトヘッドは、伝統的な経験論のように、感覚データを出発点として認識を構築していくという見解は取りません。
2. **形而上学的な意味での感性**: ホワイトヘッドは、現実の根本をなすものを「現実的事象」と呼びますが、この現実的事象は、それ自体として、ある種の「感じる」能力、つまり感性を持つとされます。これは、意識や感覚器官を持たない電子や原子のような存在であっても、自身の環境を何らかの形で「感じ」、それに反応する能力を持つことを意味します。
3. **価値論的な意味での感性**: ホワイトヘッドは、現実的事象の相互作用において、美的な価値や倫理的な価値が生成されると考えます。この価値の生成にも、感性が深く関わっています。美しい風景に感動したり、他者の苦しみに共感したりするのも、現実的事象としての私たちが、それぞれの仕方で世界を「感じ」、それに反応しているからだと考えられるからです。
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「捉えどころのないもの」への感性
ホワイトヘッドは、
感性を、単に五感を介した知覚体験に限定せず、
「捉えどころのないもの」に対する感受性として捉えていました。
彼にとって、
美しさ、真実、善、愛といった価値は、
客観的な実体ではなく、
むしろ、主観的な経験の内に立ち現れる「質」でした。
ホワイトヘッドは、
これらの「質」を捉えるためには、
鋭敏な感性が必要であると説きました。
彼によれば、
感性は、
世界を分析的に理解しようとする理性とは異なり、
世界を全体として、
そして、
その複雑さと豊かさをそのままに捉えることを可能にする力です。
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感性と創造性
ホワイトヘッドは、
感性を創造性の源泉として重視していました。
彼にとって、
創造性とは、
既存の概念や枠組みに囚われず、
新しい意味や価値を生み出す力です。
ホワイトヘッドは、
真の芸術家は、
鋭敏な感性によって世界を捉え、
その経験を独自の表現に昇華させることができると考えました。
彼にとって感性とは、
単に世界を認識する能力ではなく、
世界に新しい意味や価値を創造する力でもあったのです。