ホメロスのオデュッセイアと時間
時間の経過
オデュッセイアでは時間の経過が直線的ではありません。物語はオデュッセウスの旅の10年目から始まり、過去の出来事は彼の回想や他の登場人物の語りを通して語られます。さらに、神々の介入により時間が歪められることもあります。例えば、カリュプソーの島で過ごした7年間は、オデュッセウスにとっては永遠のように感じられますが、読者にとっては物語のほんの一部の出来事に過ぎません。
時間の認識
登場人物の時間に対する認識は、彼らの状況や経験によって異なります。故郷を離れて長い年月を過ごすオデュッセウスにとって、時間は故郷に戻るための障害であり、待ち焦がれる対象です。一方、イタカ島でオデュッセウスの帰りを待つペネロペにとって、時間は夫を失った悲しみと、求婚者たちからの圧力に耐える苦難の日々です。
時間と物語の構成
オデュッセイアにおける時間表現は、単なる物語の背景として機能するのではなく、物語の構成やテーマを強調する役割を担っています。過去の出来事と現在の出来事が交錯することで、オデュッセウスの不在によって生じた影響や、彼の帰還が持つ意味がより鮮明に浮かび上がります。また、時間の流れの不規則性は、人生の予測不可能性や、運命の力強さを象徴しているとも言えます。