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ホメロスのイリアスの批評

ホメロスのイリアスの批評

叙事詩としての構成

技巧

ホメロスのイリアスは、叙事詩としての構成において、多くの批評家から賞賛を受けてきました。特に、物語の中心となるアキレウスの怒りと、それが引き起こすトロイア戦争の悲劇というテーマが、一貫して描かれている点が評価されています。

例えば、アキレウスは物語の冒頭で、アガメムノンとの争いによって怒りを募らせ、戦場から離脱します。このアキレウスの不在が、ギリシア軍の劣勢、そして親友パトロクロスの死へと繋がっていく展開は、アキレウスの怒りの大きさと、それがもたらす悲劇を際立たせる効果的な構成と言えるでしょう。

また、イリアスは、戦争という壮大なテーマを扱いながらも、個々の登場人物の心理描写にも深く切り込んでいます。アキレウスの怒り、ヘクトールの苦悩、プリアモスの悲しみなど、登場人物たちの心情が丁寧に描かれることで、戦争の残酷さや人間の弱さがより鮮明に浮かび上がっています。

さらに、イリアスでは、神々の存在が物語に大きく影響を与えています。神々はそれぞれが異なる思惑を持って人間界に介入し、トロイア戦争の行方を左右していきます。こうした神々の存在は、人間の運命の不確かさや、抗い難い運命の力を暗示する要素として機能しています。

登場人物の描写

英雄像と人間性

ホメロスのイリアスは、登場人物の描写、特に英雄像と人間性の対比という点において、多くの批評家の注目を集めてきました。

アキレウスは、ギリシア軍最強の英雄として描かれていますが、同時に、激しい怒りや復讐心、そして親友パトロクロスの死に対する深い悲しみなど、人間的な弱さも持ち合わせています。特に、ヘクトルを殺害した後、その遺体を侮辱する行為は、英雄としての栄光の裏側に潜む、人間の残忍さを露呈する場面として解釈されています。

一方、トロイアの英雄ヘクトールは、アキレウスとは対照的に、祖国と家族を守るために戦い続ける、責任感の強い人物として描かれています。しかし、ヘクトールもまた、アキレウスとの決闘を前に恐怖を感じ、妻アンドロマケとの別れを惜しむなど、人間らしい側面を見せています。

このように、イリアスでは、英雄とされる人物たちもまた、私たちと同じように喜怒哀楽を感じ、葛藤する人間であるということが描かれています。これは、古代ギリシアの人々の英雄観、人間観を理解する上で重要な手がかりと言えるでしょう。

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