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ホメロスのイリアスの思考の枠組み

## ホメロスのイリアスの思考の枠組み

名誉と栄光

「イリアス」において、名誉(ギリシャ語で”timē”)と栄光(ギリシャ語で”kleos”)は、登場人物たちの行動原理を理解する上で最も重要な概念です。 英雄たちは、戦場での勇敢な行為によってのみ、これらの価値を手に入れることができると信じられています。 名誉は、共同体における個人の地位、他者からの尊敬、そして社会的な承認を意味します。 一方、栄光は、後世に語り継がれる、不滅の名声を得ることを意味します。

アキレウスが、アガメムノンによる屈辱に激怒したのは、自らの名誉が傷つけられたと感じたためです。 彼は、戦場から身を引くことで、自らの名誉の大きさをアガメムノンに思い知らせようとします。 また、ヘクトルが、アキレウスの挑戦を受けるのは、トロイアの英雄としての名誉を守るためであり、後世に語り継がれる栄光を獲得するためです。

運命と自由意志

「イリアス」の世界では、人間の運命は神々によって定められていますが、登場人物たちは、運命の範囲内で、自らの意志に基づいて行動することができます。 神々は、しばしば人間の出来事に介入し、運命の糸を操りますが、最終的な選択は人間に委ねられています。

アキレウスは、戦場から身を引くことで、長い人生と平穏な日々を送ることができる運命を選択することができます。 しかし、彼は、ヘクトルに親友のパトロクロスを殺された怒りと、自らの栄光のために、戦うことを選びます。 ヘクトルもまた、アキレウスに立ち向かうことで、自らの死が避けられないことを知っています。 しかし、彼は、トロイアの英雄として、運命に立ち向かうことを選びます。

復讐の連鎖

「イリアス」は、復讐の連鎖によって引き起こされる悲劇を描いています。 物語は、パリスが、メネラオスの妻ヘレンを連れ去ったことから始まります。 この行為は、ギリシア軍によるトロイアへの攻撃を引き起こし、10年にも及ぶ戦争へと発展します。

アキレウスは、親友パトロクロスの死に対する復讐として、ヘクトルを殺害します。 さらに、アキレウスの死後、アキレウスの息子ネオプトレモスが、父の復讐を果たすためにトロイアを滅ぼします。 このように、「イリアス」の世界では、復讐は新たな復讐を生み出し、終わりのない悲劇が繰り返されます。

人間と神の関係

「イリアス」では、人間と神々の関係が複雑に描かれています。 神々は、人間よりも上位の存在でありながら、人間的な感情や欲望を持ち、しばしば人間の世界に介入します。 彼らは、特定の英雄を贔屓したり、個人的な恨みから、人間の運命を翻弄することもあります。

アテナは、ギリシア軍を勝利に導くために、様々な策略を巡らせます。 一方、アポロンは、トロイア軍を支援し、アキレウスに矢を放って殺害します。 このように、神々は、自らの意志に基づいて行動し、人間の運命に大きな影響を与えます。

言葉の力

「イリアス」は、言葉が持つ力を雄弁に物語っています。 登場人物たちは、言葉によって、互いの感情をぶつけ合い、説得し、鼓舞し合います。 演説は、戦況を左右するほどの影響力を持つこともあります。

アキレウスは、アガメムノンとの口論において、自らの怒りを雄弁な言葉で表現します。 また、ヘクトルは、トロイアの兵士たちを鼓舞するために、熱のこもった演説を行います。 言葉は、「イリアス」の世界において、重要なコミュニケーション手段であり、登場人物たちの思考や行動に大きな影響を与えています。

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