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ホメロスのイリアスの思索

ホメロスのイリアスの思索

英雄の条件とは何か

ホメロスの叙事詩『イリアス』は、トロイア戦争を舞台に、アキレウス、ヘクトル、アガメムノンといった英雄たちの活躍と葛藤を描いています。
彼らの物語を通して、ホメロスは「英雄とは何か」「英雄であるために必要な条件とは何か」という普遍的な問いを私たちに投げかけています。

『イリアス』の英雄たちは、超人的な膂力と武勇を備え、戦場では獅子奮迅の活躍を見せます。
アキレウスは神のごとに強く、ヘクトルはトロイアの盾として人々を守り、アガメムノンはギリシア軍の総大将として采配を振るいます。
彼らは皆、生まれながらにして優れた資質を持ち合わせており、その力によって人々を魅了します。

しかし、ホメロスは単なる武勇だけが英雄の条件ではないことを示唆しています。
アキレウスは尊大な性格が災いし、アガメムノンとの不和によってギリシア軍を窮地に追い込みます。
ヘクトルはトロイアを守るために勇敢に戦いますが、故郷と家族への愛と、アキレウスへの恐怖の間で苦悩します。
ホメロスは、英雄たちが内面にも抱える複雑な葛藤や人間的な弱さを赤裸々に描き出すことで、真の英雄像を模索しているかのようです。

名誉とは何か

『イリアス』の世界では、「名誉(kleos)」が人間の行動原理を大きく左右しています。
英雄たちは戦場で手柄を挙げ、後世にまで語り継がれる栄光を追い求めます。
名誉は彼らにとって、死よりも重い、何よりも価値のあるものでした。

アキレウスは、アガメムノンに侮辱されたことで怒り狂い、戦線から離脱します。
これは彼が、自らの名誉が傷つけられたことに耐えられなかったためです。
彼は親友パトロクロスの死をきっかけに戦場へ復帰しますが、それはトロイアを滅ぼすためではなく、自らの名誉を取り戻し、後世に名を残すためでした。

ヘクトルは、トロイアの王子としての責任感と、アキレウスに敗北するかもしれないという恐怖の間で葛藤します。
それでも彼は、愛する家族と祖国を守るために、そして自らの名誉を守るために、アキレウスに戦いを挑みます。

『イリアス』の英雄たちは、名誉のために生き、名誉のために死にます。
ホメロスは、彼らの生き様を通して、名誉の本質、そして名誉が人間に与える影響について深く問いかけていると言えるでしょう。

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