ホブスンの帝国主義論を読む前に
帝国主義とは何か理解する
ホブソンの著書を理解するには、まず「帝国主義」そのものについてある程度の知識が必要です。帝国主義とは、ある国家が自国の政治力、経済力、軍事力を駆使して、他国や地域を支配下に置き、搾取するシステムを指します。植民地化はその典型的な例と言えるでしょう。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパ列強がこぞってアジア、アフリカ、中南米に進出し、広大な植民地帝国を築き上げた歴史は記憶に新しいところです。
19世紀後半の国際情勢をおさえる
ホブソンが『帝国主義論』を著したのは1902年、まさに帝国主義が世界を席巻していた時代です。この時期は、産業革命によってヨーロッパ列強が未曾有の経済成長を遂げ、世界各地に新たな市場と資源を求めて進出していた時代と重なります。同時に、国家間の競争が激化し、軍拡競争が勃発、国際情勢は緊迫の一途を辿っていました。このような時代背景を理解することは、『帝国主義論』を読み解く上で重要なカギとなります。当時の列強の思惑、植民地化された側の状況、国際関係などを把握することで、ホブソンの主張がより深く理解できるようになるでしょう。
経済学の基本的な知識を身につける
ホブソンは帝国主義の原因を経済的な側面から分析しました。彼は、資本主義経済が必然的に生み出す過剰資本が、帝国主義の原動力になったと主張します。過剰資本の投資先を求めて、先進国は植民地獲得に走ったというわけです。彼の論理を理解するには、資本主義の基本的な仕組み、過剰資本、投資、市場といった経済学の基礎知識を身につけておくことが必要不可欠です。
当時の社会状況を理解する
ホブソンは帝国主義を批判する立場から本書を執筆しています。彼は、帝国主義がもたらす利益は一部の資本家に集中し、大多数の人々、特に労働者階級は搾取され続けていると主張します。当時のイギリス社会では、貧富の格差が拡大し、社会不安が高まっていました。このような社会状況を理解することで、ホブソンの主張の背景や、彼が訴えかけたかったことをより深く理解できるはずです。
批判的な視点を持つ
ホブソンの帝国主義論は、今日の世界においても重要な示唆を与えてくれる古典的名著です。しかし、書かれた時代背景や彼の立場を踏まえ、批判的な視点を持って読むことが重要です。例えば、彼の主張は一部に偏りがあるという批判もあります。また、現代の帝国主義はホブソンの時代とは異なる様相を呈しているという指摘もあります。